前編
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――ウォン! ウォン!――
雄叫びと共に、小さな影が多数飛び出してくる。オレンジ色の鱗を持つ鳥竜種が次々に飛び出しては吠え、鋭い牙を剥き出しにした。ジャギィと呼ばれる小型の鳥竜手で、体は小さくとも俊敏な捕食者として知られている。
突如の襲撃に、ルーヴェンは即座に動いた。正面に吶喊しつつ、抜刀の体勢を取る。真正面で吠えている一頭のジャギィに狙いを定めた。鯉口が切られ、白刃が木漏れ日に煌めく。
「ハァッ!」
疾走から急停止しての、抜き様の一撃。素人は腕のみで武器を振り回すが、大事なのは丹田を中心として力を込めることだ。急停止からの振り下ろしにより、慣性のついた上半身によって繰り出された刃は鋭く空気を切り裂いた。
狙いは寸分違わず、ジャギィの頭蓋へと白刃が食い込む。
ルーヴェンは動きを止めない。横にいるもう一頭へ即座に横薙ぎの一撃を浴びせて飛びずさる。今度は切先がジャギィの白い腹を裂いた。仰け反って苦しむジャギィへ、さらに刺突。ナライの訓練によって身につけた技に、自然と体が乗っている。
横合いから迫ってきたジャギィに、ピリカレラの弾弓の一撃が命中した。弾丸の棘が喉に刺さり、倒れそうになった所を鉈の一撃が襲う。
鉈を逆手持ちに左右へ切り払い、素早く弾弓を放ち、ピリカレラはルーヴェンを援護した。太刀使いは独特の気迫を持っていることが多い。だがルーヴェンの気迫には負の感情が渦巻いていた。
そのことをピリカレラは敏感に感じ取っていたが、それよりもジャギィの動きが気になった。縄張りに侵入してきた外敵を倒そうとしているのなら、もっと木々に隠れながら狡猾に包囲してくるだろう。だが今のジャギィたちは無闇に雄叫びを上げ、突撃してきては太刀にかかって倒れていく。何かに怯え、追い立てられているかのように。
「まさか……!」
ピリカレラは千里眼の力に意識を集中した。その瞬間、感じた。
大きな生き物が迫っていることを。
「ルーヴェン! 上!」
彼女の警告は間一髪で間に合った。ルーヴェンが頭上を見ると、黒い巨体が風を切り裂いて急降下してくるところだった。
生物の物とは思えない、鋭い白刃を振り降ろしながら。
「くぅぅっ!」
紙一重の差で側方へ転がり、刃翼による必殺の斬撃を回避する。それでも僅かに掠めた刃が、篭手の表面に傷をつけた。
素早く起き上がり、相手を見て……ルーヴェンはぞくりと背筋が寒くなった。
黒毛に覆われた頭部と、鋭い嘴。鞭のように長く、しなる尾。漆黒の鱗と太い爪、丁字乱れのような刃文を持つ前足の翼と刃。そして全身に走る傷跡と、自分を凝視する黄色い瞳。
ルーヴェンもピリカレラも、その目を見ただけで察した。狩る者の目だ。この竜はジャギィの群れを追い
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