前編
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「落とし穴はね。でも怒っているときには引っかかりやすいみたい」
話し合いつつ準備を整え、二人は出発することにした。千里眼の力があるピリカレラが先頭に立ち、斥候を務める。
「改めて、よろしくね!」
笑顔でそう言う彼女に、ルーヴェンは若干の不自然さを感じながら頷いた。
森へ入ると、そこがもう狩人の領域、弱肉強食の理が支配する場所であることが肌で分かった。気を引き締めるルーヴェンの前を、少女は鉈を片手に軽い足取りで歩いて行く。鹿角ノ弾弓に付属している物で、近接戦闘に用いるための鉈だがピリカレラは邪魔なツタを切り払うのに使っていた。足場が良いとは言えない森の中を苦もなく歩く後ろ姿を見れば、相当に山歩きに慣れていることが伺える。歳は自分より少し下だろうが、実戦経験では劣らないだろうとルーヴェンは思った。
「ナルガクルガは今どの辺りだ?」
「まだ遠い……でも」
ピリカレラはふいに身を屈めた。一瞬敵かとルーヴェンは思ったが、彼女は地面に落ちた木の枝を拾うだけだった。
「少し前にここを通ったわ」
その枝を見せられ、彼女の言っていることを理解した。木の枝には葉が多数ついており、まだ瑞々しい。そして断面はささくれ立っておらず、鋭利な刃物で切り落としたかのように滑らかだった。それも木の色合いからして、つい最近切られたもののようである。
ナルガクルガが木から木へと飛び移る際、刃翼で切り落とされたのだ。
上を見上げてみると、周囲の大木に数カ所、傷跡が見受けられた。単なる爪や牙の跡ではなく、鋭利な刃翼によるものだ。縄張りの印でもあるのかもしれない。
「まだそう遠くまでは行っていないんじゃないか?」
「うん、今は……あっ」
ピリカレラが左側に目を向けたかと思うと、突如そちらへ駆け出した。ルーヴェンも即座に鉄刀の柄に手をかけ、身を低くして追う。ナルガクルガの気配を察知したのだと確信した。周囲に気を配りつつ彼女を追う。
……が。
ピリカレラは樹液の滴る大木の根元に屈み込むと、そこの地面をまさぐった。
「特産キノコ見っけ」
思わず脱力して転倒しそうになるルーヴェン。先ほども感じた違和感が疑念に変わってくる。この少女は本当にナルガクルガを討つ気があるのか、と。特に今回相手にするのが特に危険な個体であることをピリカレラ自身が語っていたし、ましてや彼女の兄の仇でもあるのだ。それなのに無邪気に笑顔を見せ、キノコの採取までしている。自分なら脇目も振らず、仇目がけて一直線に進むだろうに。
「……あのさあ、ピリカレラ」
「あ、モンスターが来たと思ったの?」
採取した親指大のキノコをポーチに収めながら、彼女はルーヴェンの心中を察したかのように言った。
「ルーヴェンは隙が無さ
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