前編
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ライで、その後自身もアカデミーで訓練を受けることになったのだ。復讐のために。
ルーヴェンが覚えているのはその竜が獣竜種らしき、翼を持たない種族だったことと、背中に長大な槍のような器官があり、父がそれに刺貫かれたことくらいである。ナライたち教官や校長に尋ねても、そのようなモンスターを知っている者はいなかった。
だが保管されている膨大な資料の中になら、もしかしたら何らかの手がかりが眠っているかもしれない。あのモンスターの足跡を辿り、葬り去るために必要な情報が。
「……ピリカレラ、あんたは誰から狩りを教わったんだ?」
「父さんから。目に怪我をして引退してるけど、チュプコタンで一番の弓使いだったの」
「そうか。親父さんから……」
父があのとき死なずなければ、自分も父の指導を受けてハンターとなったのだろうか。そうだったら人生はどう変わっていたことだろう。
考えても仕方ないことだと思い、ルーヴェンは思考を中断した。過去は変えられないのだ。
例え復讐を成し遂げても……
竜車はゴトゴトと揺れながら順調に進み、やがて目的地の鬱蒼とした森に行き着いた。木々の合間からケルビが顔を覗かせるも、ルーヴェンと目が合うと慌てて引っ込む。植物も豊かに生い茂っており、並び立つ大木の上からは鳥の鳴き声も聞こえた。多くの生き物がここで生まれ、行き、そして死んでいく。
それが自然界の営みだが、以前来たときにはなかった重圧をルーヴェンは感じていた。
「……ここにいるな」
「ええ。森の中を動き回っている」
ピリカレラも頷いた。彼女の装備している防具・桔梗シリーズには『千里眼』と呼ばれる力が備わっている。着用した者の感覚を強化し、モンスターの足取りを察知できるというものだ。具体的な原理はギルドが軍事利用を恐れて秘匿しているが、この力があれば討伐対象を探すのは用意だ。
竜車は森近くの空き地に停まり、ルーヴェンたちは荷物を降ろした。薬品類などはポーチや背嚢に入れ、野営用のテントを設営し始める。安全と思われる地帯を狩りの一時拠点とするのだ。
「ご多幸お祈りいたしますニャ」
御者のアイルーをそう告げて、竜車を走らせ去って行った。
テントの設営は二人とも手慣れたものだった。素早く完成させ、道具類を整理する。持って行くのは糧食や薬品類、罠類、そして何よりも大事な武器と、剥ぎ取り用のナイフだ。ピリカレラの方は矢につける薬品の入った瓶も一通り備える。鹿角ノ弾弓は弾丸を発射する弓だが、弾に棘がついているため瓶を使うことができるのだ。剣士であるルーヴェンはガンナーより荷物は少ないが、愛刀の切れ味を保つための砥石は常に持ち歩かねばならない。
「ナルガクルガは罠を見破るんだったよな?」
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