前編
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した。御者はギルドのアイルーだ。しばらくはナルガクルガの特性などを語り合っていたが、丁度昼時になったので、二人とも用意していた携帯食料を竜車の中で広げた。ルーヴェンの物は干し肉とパンだったが、ピリカレラは肉団子のような物を金属の容器に入れていた。
「それ、手作りか?」
「うん。私の村……チュプコタンではよく食べるの」
魚を骨ごと叩いて刻み、丸めて作るのだとピリカレラは説明した。魚の小骨やその隙間の肉なども余さず調理できる方法で、手間はかかるが獲物を無駄なく食べるための知恵だ。
「一つ食べる?」
彼女は親しげな笑顔で容器を差し出してきた。これから兄の仇を討ちに行くというのに、こんな笑顔を浮かべる余裕があるのかとルーヴェンは不思議に思った。
「ああ、くれ」
共に戦うからには親睦を深める必要がある。互いを全く理解しないでチームプレイをするくらいなら一人の方がまだ良い。ルーヴェンはアカデミーでそれを習ったし、ピリカレラもハンターとしての経験から知っていた。
魚の団子を一つ摘んで食べると、味わいは素朴ながらも豊かだった。細かく刻まれた骨の食感も良い。
「結構イケるな」
感想を述べつつ水筒の茶を飲むと、ピリカレラは丸い目を彼の左手首に向けた。
「それ、奇麗ね」
「ん? ああ」
一瞬何を言っているのか分からなかったが、その目線から手首の紐だと察した。砕いたマカライト鉱石をまぶして作られるこの紐は強靭で、独特の輝きを発する。
「アカデミーの訓練生の印さ。この狩りを終えたら外してもらえるかもしれない」
「つまり卒業っていうこと?」
ルーヴェンは頷いた。
「何としてもアカデミーを卒業したいんだ。卒業生はアカデミーにある書籍を自由に読めるから」
ハンター養成施設であるハンターアカデミーには膨大な数の資料がある。生態、出現記録、未確認モンスターの目撃情報、先人たちの足跡……訓練生が閲覧できる書類だけでも数多いが、卒業生になればより多くの資料を見ることができる。さらに教官になれば機密情報クラスの資料も閲覧可能だ。ルーヴェンの目的を達成するのに必要なことだった。
「本が好きなの?」
「好きか嫌いかで言えば好きだけど、それよりも欲しい情報があってな」
ルーヴェンは幼少期の記憶を思い出す。おぞましい記憶だった。
ルーヴェンの父は近隣では名の知れたハンターだったが、突如襲撃してきた謎の竜には敵わなかった。それまで住んでいた村も、平和な日々も一瞬で失われた。人は死に、建物は崩れ去った。全てを失ったルーヴェンは屍肉を狙うジャギィへの恐怖に震えつつ、瓦礫の下で死線を彷徨っていた。やがて調査にきたハンターアカデミーの訓練生に発見されて一命を取り留めた。その訓練生が若き日のナ
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