前編
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なっていることの一つだった。ピリカレラが弓使いであることは察していたが、背中に武器らしい物を背負っていなかったのだ。
ピリカレラは腰に手を回し、小振りな道具……否、武器を卓上へ出した。剣の柄のような握り手と、台座から突き出す湾曲した角。その間に張られた弾性の帯。一件玩具のようにも見えるが、立派な狩猟用の武器だ。
「鹿角ノ弾弓か。本物は初めて見た」
矢ではなく弾丸を発射する特殊な弓だ。イロモノや珍品として扱われることが多いが、普通の弓より遥かに小さく、取り回しやすいことから好むハンターもいる。どうやら彼女はなかなかの腕前のようだ。
「よく私が弓使いだって分かったわね」
「手を見ればタコの位置とかで分かるさ」
「なるほど……」
感心したようにピリカレラは呟いた。剣術のみならずこのような観察能力においても、ルーヴェンは同期の中で抜きん出ていた。だから尚更、なかなか卒業を認められないことに苛立ちを覚えていた。
「貴方の方は太刀使いなのね」
「ああ。大剣も使えるけどな」
笑みを浮かべ、ボコスカッシュの残りを飲み干す。その間にピリカレラは羊皮紙の書類を卓上へ出した。ギルドの依頼書である。場所はノスリ自治領からほど近い森林地帯で、ルーヴェンも行ったことのある場所だった。依頼料や報酬金額の他、討伐対象がナルガクルガであることが書かれている。またピリカレラの言ったように、そのナルガクルガが危険な個体であり、他の地へ遁走する前に討伐せよとのギルドの意向も書かれていた。
「貴方さえよければすぐに準備して、今日中には現地へ行きたいんだけど……」
「望むところだ」
そう答え、ルーヴェンは左手首に結ばれた、青い麻紐をちらりと見た。アカデミー訓練生の印だ。これを外すときが独り立ちの時である。ナルガクルガを狩ることができれば、皆自分の実力を認めるだろう。だがそれも出発点でしかない。
幼い頃、自分から家族を奪った竜を探し出して討つ。復讐こそが、彼の最終目標だった。
「それじゃ、買い物に行きましょう」
ピリカレラに続き、ルーヴェンは席を立った。
狩り場へ向かう前の準備は怠ってはならない。武器の手入れはもちろんのこと、回復薬や砥石なども買い揃え、自分で採取したハチミツを回復薬に調合して効果を高める。ピリカレラの品物を選ぶ目や調合の手際は見事なもので、やはりそれなりに練度の高いハンターなのだろう。アカデミーでは調合技術なども学ぶが、ルーヴェンは戦闘に比べるとやや不得手だ。しかしそれが卒業を遅れさせていた理由ではないことを、彼は分かっていた。他に何か、自分に足りないものがあるのだ。校長が言ったように、この試練を通じて学ぶしかない。
アプトノスの曵く竜車に荷物を積み込み、二人は出発
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