前編
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小柄で一件華奢な体つきだが、無駄なく鍛えられていることがルーヴェンには分かった。コップを置いたときに掌にあるタコが見え、その位置から弓使いであることも察する。
「あんたがピリカレラさん?」
「ええ」
頷いた彼女に、ルーヴェンは割符を差し出す。少女の方がポケットから同じ形の割符を取り出し、ルーヴェンのそれと合わせた。書かれた絵がぴったりと合い、アカデミーの紋章である飛竜の姿となった。
「俺はルーヴェン・セロ。あんたの狩りを助けるよう、アカデミーから言われてきた」
「ありがとう。私一人では倒せない相手なの」
滑らかな声で礼を言い、ピリカレラは微笑んだ。妖精のような笑顔、と陳腐な表現ではあるがルーヴェンは思った。給仕のアイルーを呼び止め、ボコスカッシュという炭酸飲料を注文すると、テーブルを挟んで向かい側に座る。
「早速だけど、相手のモンスターは何だ?」
すぐさま本題を切り出す。『独り立ちの試練』に逸る心を抑えきれていなかった。そんなルーヴェンを見つめ、ピリカレラは声のトーンを少し落として告げた。
「迅竜」
「……ナルガクルガか」
ルーヴェンの表情が僅かに強張った。密林の暗殺者などとも呼ばれる飛竜ナルガクルガ。ベテランのハンターでさえ迂闊には挑めない存在だ。翼に切れ味の鋭い刃を有し、強靭かつ軽量な体で俊敏に動き回る。だがそれ以上に恐ろしいのは、狡猾さと凶暴さを併せ持った知能の高い飛竜であることだ。
ルーヴェンは戦ったことはないが、手強さは師であるナライからもよく聞かされている。師はナルガクルガの刃翼から作った太刀を愛用しており、その切れ味に惚れ込んでいた。あの刃の原料となった刃翼の持ち主と戦うのである。
「迅竜と戦ったことはある?」
「いや。リオレウスは倒したけど。あんたは?」
「一度だけ。仲間と一緒だった。でも今追っている迅竜は手強いの」
丁度アイルーが飲み物を持ってきた。すっきりとした炭酸を味わいながら、ルーヴェンはピリカレラの話に耳を傾ける。
「奴は私の兄を殺して、他の狩人も大勢退けてきた。他の奴よりずっと賢くて強いわ」
経験を積んだモンスターは手強い。そのことをルーヴェンもよく知っていた。ことに知能の高い種類は学習能力があり、人間という生物のことを理解し始める。元々狡猾なナルガクルガなら尚更強敵となるだろう。
だが今更恐れはしない。多くのハンターが撃退されてきたのなら、そいつらの無念をまとめて晴らしてやろうとルーヴェンは思った。ましてや目の前にいるこの少女も自分同様、モンスターによって家族を失ったのである。親近感と同時に、彼女のためにも討伐を成功させたいという思いが湧いてきた。
「なるほど。ところで、あんたの弓はどうしたんだ?」
先ほどから気に
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