序章
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武器類も携帯していない。しかしその表情は狩り場と同じく引き締まり、周囲の椅子から自分を見つめる教官たちの言葉を待っていた。
この場の長である竜人族の老人は、人間の半分ほどの背丈だった。立派なあご髭を蓄え、細い目の好々爺然とした風貌だ。しかしかつてハンターとして実戦に出ていた証に、腰には今でも剥ぎ取りナイフを帯びている。このハンターアカデミーの校長だ。
「リオレウスの単独討伐を成し遂げたそうじゃの」
「はい」
ルーヴェンは短く答え、老人は彼の顔をじっと見つめる。
「お主の実力は同期の訓練生の中でも飛び抜けておる。だが未だにお主だけが卒業できていない」
その言葉に、ルーヴェンは拳を固く握りしめた。
ハンターアカデミーの生徒は入校後、集団で基礎訓練を受けた後、それぞれが各教官の弟子として修行を積む。そして一定のレベルに達したと判断されると、『独り立ちの試練』として課題が与えられる。それをやり遂げることでアカデミーを卒業し、ギルドから自由に依頼を受けられるようになるのだ。
ルーヴェンの同期生は皆、その試練を与えられて達成し、卒業していった。彼らが討伐できたのは彩鳥クルペッコや水獣ロアルドロスのような、大型ではあるが一流のハンターならそれほど苦労せずに倒せる程度のモンスターに過ぎない。しかし空の王者リオレウスすら討伐できるレベルのルーヴェンだけが、未だ『独り立ちの試練』を受けていないのだ。その域まで到達していないという理由である。
彼は何としても、このアカデミーを卒業したかった。自信の目的を成し遂げるためにはその経歴が必要なのだ。
「お主にはまだ学ぶべきことがある」
校長はそう言って、ポケットに手を入れた。皺だらけの手で取り出したのは半円形の木片で、翼のような模様が書かれている。半分に切れてはいるが、ハンターアカデミーの紋章だとルーヴェンには分かった。
「明朝、この割符を持ってギルド集会場へ行くのじゃ。そしてある狩人の手助けをせよ」
ギルドの集会場はハンターたちが依頼を受ける他、情報交換や仲間集めに使われる施設だ。ルーヴェンも師匠と共に訪れ、アカデミー経由での依頼を受けたことがある。
「その狩人の名はピリカレラ。彼女の狩りを助け、成し遂げ……学んだことを儂に報告せよ」
校長は髭面に微笑を浮かべた。
「納得の行く答えであれば、その場で卒業を認める。これがお主への試練じゃ」
「はい! 全力で成し遂げます!」
ルーヴェンは勇んで返事をした。前へ進み出て、校長から割符を受け取る。
待ちに待った卒業の機会がやってきたのだ。例え相手がどんなモンスターであろうと、必ずや愛刀の錆としてみせる。復讐への足がかりを得るために。
心が熱くなっていく彼の耳に、別の声が聞こえ
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