4/14 しあわせになんかならないで
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土方さんに縁談が来た。何でも、お偉いさんのお嬢様だとかで無碍にもできないとか。
「いやー、あのトシに縁談かァ」
「近藤さん、俺は結婚なんかしねーぞ」
「所帯ぐらい持っても良いと思うんだが……まあお前の好きにするさ。だが会うだけ会ってみてくれ、とっつぁんの紹介だからな」
「分かってる」
俺はそれ以上聞いていたくなくて黙ってその場を後にする。後ろで土方さんが俺を呼ぶ声がしたがそれも無視した。
河原に寝転んで空を見上げる。
一体何だってんだ。結婚でも何でもさっさとすればいいじゃねーか。
「……チッ」
青い空が眩しくてアイマスクで目を覆う。
――分かってる。こんなのただの醜い嫉妬だ。
俺じゃ土方さんを幸せにできないから、誰かが土方さんを幸せにするのかと思うとどうしても許せなかった。
俺のものにならないなら、俺が幸せにできないなら、幸せになんかなってほしくない。本当に醜い。
今頃土方さんは見合いの席。
土方さんはこの縁談を受けないだろう。真選組一筋の人だから。
それでも不安になってしまう。
結婚はしないにしても土方さんが相手に惚れてしまったら。土方さんの近藤さんへの忠誠以外の心が誰かに向けられるなんて、俺には耐えられない。
不意に影ができて隣に誰かが立つ気配がする。
「……断ってきた」
それはあまりにも聞き慣れた声。驚いてアイマスクを首までずらすと、土方さんが煙草を吹かしていた。
「何でアンタがここに」
「断って抜けてきた」
そんな事して大丈夫だったのか、とは言えなかった。聞かなくても分かる。きっと後でこの人や近藤さんが尻拭いする事になるんだろう。
「お前、この話来てから機嫌悪かっただろ」
「……気付いてたんですかィ」
「何年一緒にいると思ってんだ馬鹿」
紫煙を吐き出す仕草が妙に色っぽくて目を逸らす。
「安心しろ。俺は結婚なんかしねェ」
「誰も心配なんかしてやせん」
「はいはい」
土方さんはククッと喉を鳴らして笑いながら隣にどっかりと腰を下ろしたかと思えば、俺の髪をワシャワシャと撫でた。
「俺には近藤さんとお前がいてくれればそれで良い」
「……ッ!」
この人はどこまで俺を振り回せば気が済むんだろう。天然もほどほどにして欲しい。
「そういう事言うと自惚れますぜ」
「……自惚れりゃ良いじゃねーか」
ほんのり赤く染まった頬に俺の理性はいとも簡単にぶっ飛んで、起き上がるのと同時に土方さんを草の上に押し倒す。
「んっ……」
口付ければ弱々しく肩に手が置かれるもそれ以上の抵抗はなく、それを勝手に肯定と受け取って唇を割って舌を入れた。
「ふ……ぅん」
歯列、上顎、舌の付け根を舌先で愛撫し舌を絡めれば、土方さんの肩が震えて全身の力が抜けていくのが分かる。
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