第十五話 蠢動
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ちょっと恥ずかしかったので小声で問いかけると大公も声を潜めた。もしかして大公も恥ずかしいのか?
「ヴォルフスブルク子爵だ。お前が知らぬのも無理は無い、顔合わせの席には居なかった。当日体調不良と言ってきてな、欠席した」
「そうでしたか」
俺が頷くと大公も頷く。目が悪戯っぽく笑っている。
「ハルツ男爵もヴォルフスブルク子爵もお前がブラウンシュバイク公になるのを喜んではいなかった。内心では認めていなかっただろうな。しかし先日お前がコルプト子爵達を抑えつけるのを見て怖くなったのだろう。一生懸命機嫌を取ろうとしている。もっともそれは彼らだけではないが……」
「……」
なるほど、道理でさっきから妙に御機嫌な奴が多いと思った。
「しかしまだ最終試験が残っていますが……」
「遠征が終わってからでは遅いと思ったのだろう。それだけ皆、お前を怖れている。ブラウンシュバイク公爵家の当主として認めたという事でもある」
「なるほど」
どうやら俺は流血帝アウグスト並みに怖れられているらしい。結構な事だ。つまり遠征で失敗は出来ない、そういう事だな。プレッシャーで胃が痛いよ。それにしてもさすがだと思ったのは大公夫人とエリザベートが沈黙を守っている事だ。普通なら会話に加わってくるところだが、何も言わずにニコニコしている。偉いもんだ。
フリードリヒ四世が現れたのは御機嫌な貴族達の相手を四人ほどしてからだった。お願いだからもっと早く来てくれ……、俺の忍耐にも限度というものが有る。下心アリアリの脂ぎった親父どもと化粧の濃いおばさんの相手はうんざりだ。
舞踏会が始まると先ずは皇帝陛下への挨拶だ。こういう場合、偉い順に挨拶する事になっている。これまではブラウンシュバイク公爵家とリッテンハイム侯爵家で交互に先陣を争っていたらしい。馬鹿馬鹿しい話だが両家にしてみれば面子の問題だ。
今回は両家一編に挨拶することになった。俺達は仲良しなんだぞ〜という事を皆に見せつけるためらしい。というわけでブラウンシュバイク公爵家から四人、リッテンハイム侯爵家から三人が最初に皇帝に近づいた。皆がこちらを注目している。視線が痛いぜ。
「陛下におかれましては御機嫌うるわしく」
「うむ、そち達も仲が良さそうで何よりじゃ」
「はっ、恐れ入りまする」
大公とフリードリヒ四世が話している。みんな御機嫌だ。変に張り合う事も無くて気が楽なんだろう。先に年長者四人が挨拶する、俺を含めて若い三人はその後だ。
皇帝の半歩後ろにはグリューネワルト伯爵夫人が居る。髪を高く結い上げているけどやっぱり美人だわ。これじゃラインハルトがシスコンになるわけだよ。今二十四歳か、俺より三つ年上……、ちょっとでいいから話してみたいもんだ。声を聞いてみたい。
「ブラウンシュバイク公、そちは何時
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