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あいらぶらざー!
悪い人と姉
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目の前にある喉が動き、アムの口元がにやりと歪んだ。













 やっと森を出れたのは、日が薄っすらと地平線を照らし始める時刻だった。



「俺は、カルミナ族だから」



 そう、アムは言う。



「カルミナ族はみんなあんたみたいに強いの?」



「みんな、ではないがな」



「ねぇどうやってルッペン倒したの?教えて」



「おまえにはできない」



「どうして?」



「俺は、カルミナ族だから」



 そうして話は振り出しに戻る。



 あたしはもう、自分の足で立って歩いていた。流石に重いあたしを抱えさせて、足元の不安定な森の中を歩かせるのは申し訳ないし、それで二人とも転んで骨折でもして共倒れになっても嫌だからと早々にあたしは降ろして貰っていた。



 アムというこの男。やっぱり、悪い人じゃないみたいだ。表情の変化はそんなに激しくないけれど、話していると薄く笑うことも多くなってきた。



「え、あれ!?」



 あたしは叫んだ。



 なんと、遠く町の入り口に、ぽつんと人が立っている。



 細っこい体を震わせながら、金の髪を朝日に輝かせて、人がー…。



 それが誰かわかった瞬間、思わずあたしは駆けだした。



「ノエル!」



 ノエル!ノエルだ!あんな天使みたいな人間、ノエルしかいるわけない!ノエルが、この姉さんを迎えに来てくれたんだ!誰かから、あたしが森に行ったと聞いて。心配してくれたんだろう。ああ、あんな薄着で…風邪引いているのに、なんて姉さん思いのいい子!



 ノエルが走ってくるあたしを認識する。ぱあっと花が綻ぶように笑いかけ、てその表情が固く強張った。



 え?と思う間もなく腕を強く後ろに引かれた。あたしはそのままの勢いで地面に尻餅をつく。その横を、黒の衣が翻った。



 あたしが顔を上げた時に見たのは、ノエルの頭部を太い腕で薙ぎ払った、アムだった。



 ノエルは軽く五歩分も吹き飛び、近くの民家の壁に激しい音を立てて叩きつけられた。



「ノエル!」



 あたしは何が起こったか理解できないまま、悲鳴のような声を上げた。



「ノエル、ノエル、ノエル!」



 無我夢中でピクリとも動かないノエルに駆け寄ろうとするあたしの腕を、すばやくアムが掴んだ。



「アム!」



あたしは、あたしを引き留める人間を、激しい瞳で振り仰いだ。生まれてから、一度だってこんなに憎しみをこめて他人の名前を呼んだことはなかった。でも、あたしはあ
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