悪い人と姉
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のに、耳が集中する。びしゃっと背のあたりに大量の水分がかかった感覚があってあたしは大袈裟なくらいびくりと体を震わせた。
「・・・もういいぞ」
アムの声がして、視界に光が戻ってきた。アムが外套を剥いでくれたのだ。あたしはその黒髪が見えるや否や飛びついた。
驚いたように見開かれる目も、あたしを受け止める腕も、足も、ある、ある、ある・・・!
アムはその体を何一つ損なうこと無く、そこに立っていた。
「よ、よかったぁ・・・!」
あたしは思わずへなへなとその場に崩れ落ちそうになった。それをアムが腕を掴んで防ぐ。
「そこら中体液だらけだからな。座れば腰から溶けるぞ」
「ハイイッ!」
あたしは壊れたバネのように、命綱のアムにしがみついた。アムはまた驚いたように体を揺らして、それからひょいとあたしを横抱きにした。
「は!?え!何で!」
「歩き回れば足が溶ける。いちいち俺の靴を貸すより、こっちの方が楽だ」
いきなり空に浮いた足をバタつかせていると、そんなことを言われた。
靴まで特別製なのか・・・!用意の良いことで。いや、問題はそこじゃ無い。あたし、重いでしょ・・・!男兄弟に混ざって畑仕事しているからか、一般女子の体重よりもあたしは重いのだ!
「暴れるな。死にたいのか」
そう言われて、あたしはやっと諦めた。まだ死にたくありません・・・。
まぁいいや、こいつに重いと思われようが、もういいと思おう・・・。
そう思ってあたしは全身の力を抜いた。もうこうなったらむしろ運んでもらえてラッキーぐらいに思っとこう。
あ、そうだ。ルッペンって結局どんな鳥だったんだろ。
興味本位できょろりと周りを見渡した途端に、ばさりとまた視界が遮られた。
「うわぷ」
「見るな。細切れにしたから、見ても分からないぞ」
それは、どうやらあたしがさっきまで被っていた外套であるらしい。
細切れ・・・えっ。どうやって?アムの武器は、棍の筈だ。それは切る武器じゃ無い。叩き潰す武器。どう頑張っても、動物を切断できる訳がない。それなら、他にも刃のついた暗器を隠し持っていると言うこと?
あたしはにゅっと手を伸ばして、外套を触ろうとする。制止の声は無い。硬い皮に指先を滑らせる。・・・乾いている。これを被って震えていた時は、確かに液体が降りかかった感覚があったのに・・・。
「・・・あんた、ナニモノ?」
あたしは外套を目の下まで下げると言った。
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