悪い人と姉
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んて、考えたくも無い・・・。
「ルッペンがなぜ裏依頼だったのか教えてやろう。ルッペンの体液は、混じりけの無い濃硫酸だ。皮膚も武器も、触れた傍から溶け落ちる。退治しても五体満足で済む保証はないんだ!」
アムが強くあたしの肩を抱いた。あたしもアムにしがみつく。
「うへ、うへ、うへ・・・」
さっきまでバカにしていた鳴き声が、急に不気味に聞こえてくる。
「囲まれた・・・」
アムが嫌なことを言う。
「もう二人では逃げられないな。・・・いいか、サラ。その外套は特別製だ。濃硫酸も防ぐことが出来る。俺が合図をしたら、それを被って蹲っているんだ」
「え、待って、あんたは、あんたはどうするのよ!」
「俺は大丈夫だ」
「大丈夫なわけ無いでしょ!あたしはいい。あんたのものだからあんたが着て!」
あたしが外套を脱ごうとする手をアムが止めた。
「本当に大丈夫なんだ、俺は。カルミナ族だから」
よくわからないことをアムは言う。カルミナ族も人間では無いのか。カルミナ族だから大丈夫とはどういう意味だ。
「大丈夫なわけ、ない・・・!」
あたしは叫んでアムの胸を押した。
「アム!あんたが思ったよりいいやつってのはもう分かってる。あたしを助けようとしてくれているのよね。でもね。守って貰わなくていいから、あんたはこれ着て、逃げて。あたしなら大丈夫。こんなところで死ぬ気は無いし、ひとりでもどうにか切り抜けてみせるから」
「サラ・・・」
アムが強く、その両の腕であたしを抱きしめる。
「俺を信じてくれ。お願いだ。おまえを絶対に傷つけさせないと誓うから。信じると、そう言ってくれ」
「あたしのことはいい。でも、『信じる』」
あたしは躊躇なく言った。なんとなく、この男は、信じられると思った。
「ありがとう」
男は少しだけ驚いた顔をして、それからふわりと笑った。邪気の無い笑顔だった。普段仏頂面だからか、笑うと年相応に幼く見えた。
「伏せろ!」
レアな笑顔に驚く暇なくアムが叫んだ。あたしは咄嗟に外套を被って蹲る。視界が闇に染まる。
「うへ、うへ、うへ」
鳴き声が近い。本当にアムは、アムは大丈夫なんだろうか・・・。
でも信じると言った手前、あたしは、心配ないと言うアムを信じて祈るしかない…。
「うへへぇ」
ドクドクと鳴る心臓の音がうるさい。土を踏みしめる音、草が擦れる音、そう言うも
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ