悪い人と姉
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けれど、近づいた唇が耳元で囁いた言葉で、あたしは動きを止めた。
ルッペンが、いるって言った?
「鳴き声が聞こえる」
鳴き声?あたしは耳を澄ませた。
「・・・うへ、うへ、うへ・・・」
「・・・」
いや、確かに何か聞こえるけど・・・。
「うへ、うへ、うへへ・・・」
「え、アムさんもしかしてこの酔っ払ったオッサンみたいな笑い声がルッペンの鳴き声って言ったりしませんよね?」
「そうだ。その酔っ払ったオッサンみたいな、心底不愉快な笑い声がルッペンの鳴き声だ」
「ルッペンって・・・人なの?もしかして今回の依頼はキモいオッサン退治?だから裏依頼だったり…」
「そう言いたくなる気持ちも分からなく無いが、ルッペンは正真正銘の鳥だ」
「トリ!」
「それにしても、妙だな・・・数が多い。それに、近づいて・・・」
ふと、アムはあたしの腕を持ち上げて言葉を失った。あたしもつられて自分の腕を見るが、特に普段と変わったところは無い。強いて言うのであれば、そこには森の道々で切った傷が沢山ついている。痛いは痛いけど、そんな心配されるほどのものじゃないし・・・。
しかしアムは、噛みつくようにあたしに食ってかかった。
「おまえ・・・!上着はどうした・・・!」
「上着?持ってないけど・・・」
あまりの剣幕に驚いて、あたしは腕を掴まれたまま体を引いた。
「くそ!」
アムはいきなり立ち上がった。あたしもアムに引きずられるようにして共に立つ。
アムは素早く自分の外套を脱ぐと、あたしを包んだ。それから自分に引き寄せる。あたしは何が起こったかさっぱり分からない頭で、されるがままだ。
「いいか、サラ、良く聞け・・・このまま逃げる」
「えっ、何で!?」
「ルッペンの生態を知らないんだろう。ギルドの奴らも、どうして何も知らせずにおまえを送り出したんだ!」
アムは激しく怒っていた。
それはあなたが退治した後、安全に横取りする予定だったからです。とは言えない雰囲気よね、やっぱり・・・。
「ルッペンはな、吸血性だ。普段は温厚な鳥だが、食事の時は獲物が皮になるまで狂ったように血を啜る。血の臭いにも敏感だ。植物で切ったのか!ならその植物にも血がついているはずだ。それを嗅いで、ルッペンは町まで来る。血の臭いを、おまえを追って!」
あたしは青くなった。傷だらけになった足と腕が視界に入る。どれだけ血を落としてきたのかな
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