悪い人と姉
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と思ってあたしはアムに声をかける。
「・・・どう、ルッペン来た?」
「来ていない」
その言葉にあたしはキレた。
「来ていないって何よ!あたしはこんなに我慢してあんたとくっついているのに!どこがだめなのよ!」
「そういうところがだろ!?」
そう言われてあたしはぐぬぬと口を閉じた。ならば−・・・。
「アイシテイルワアナター」
「とんだ大根女優だ」
自分でもそう思っていたのでぐうの音も出ない。
わかった。つまり、リアリティが足りないと言うことなのだ。本当の恋人じゃ無いから当たり前なんだけど、あたし達の言葉や態度には心が無い。それが分かるのか、ルッペンは姿を現さない。どんな鬼監督だ!
それならばと、あたしは愛しのレアンオン兄さまを思い浮かべた。いつだって、格好良くて、優しかった、あたしのレアンオン兄さまー・・・。
あたしは後ろのアムに甘えるように寄りかかると、その顔を見上げた。
「兄さまー・・・」
アムの黒い瞳が見開かれ、驚いたようにあたしを映す。
「あたし、あなたのこと、だいすー・・・」
その時、風が吹き、炎が燃え上がった。
アムの、黒い髪が、黒い瞳が、紅に染まる。
それは、いつか見た優しそうな面影に重なる−・・・。
「…大好き」
その音は、意図しない強さで以て響いた。
あたしは自分が落とした言葉に、口を押さえて俯いた。
あたし、今、いま、誰を想像して、誰にー・・・。
顔が熱い。ノエルの風邪がうつったんだ。きっとそうだ。そうに決まっている。じゃなかったら、どうしてこんなに心臓がばくばくと鳴っているものか。
「サラ」
しかし間髪入れず低い声が降ってきて、あたしの頤をひやりとした手が押し上げる。
まるで自分の視線から逃げることを許さないと言わんばかりの強引さだった。
「愛している」
あたしの目をしっかり捕らえて、アムは言った。その声は、あたしと同じように、強く、強く、アムの心を表すようにあたしに届く。きっとアムも、好きな恋人を思い出しているのだろう。けれど、その目は、言葉とは裏腹にとても、怒って、いる?一体、何に。
す、とあたしの顔に影が落ちる。アムの顔が近づいてくる。え、やだ!彼が何をしようとしているのか、あたしは混乱して思わず腕を突っ張って抵抗した。
「サラ、サラ・・・聞け。ルッペンがいる」
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