良い人と姉
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けどそういえばこの男、稀少民族のカルミナ族では無いか。稀少民族は国の法律とは別に内々の規律があるらしい。もしかしたら名前に関するルールもあるのかも。
「あーえっと、言いたくないなら無理に言わなくても良いわよ。こっちで勝手に呼ばせて貰うから。そうね、あんた黒いし、ゴキブリ野郎・・・」
「アムだ」
ゴキブリ野郎、もといアムがあたしの言葉を遮るように言った。
「おまえ、名付けのセンス破滅的だな!子供の名は悪いことは言わないから絶対に夫につけて貰えよ。じゃなきゃ子供が早々に世を儚む」
「は?失礼ね!それにご心配には及びません〜まだ夫も子供もいませんから〜べー」
「へぇ。十七で」
「嫁き遅れで悪かったわね」
「俺も妻がいないからそう言う意味では同じだろう。そっちの名前は?」
「サラ。あたしの方が年上のようだから、サラ姉さんと呼ばせてあげなくも無いわよ」
即座に否定されるかと思ったけれど、意外にも返答が無い。一拍おいて、アムが口を開いた。
「・・・いや、遠慮しておく」
「・・・えーと、何、姉に憧れてたりするの?それなら本当にそう呼んでもいいわよ。誤解していたお詫びに」
「違う」
今度はスッパリと返事が返ってくる。
「あたしは姉さんがいたらいいなぁ、と思っていたわよ。うちの家族、驚異の男率を誇っているから」
「そうか」
生返事をして、男の手が何かを火の中に投げ入れた。ゴウッと炎が燃え上がり、すぐに大人しくなる。
「なに、それ」
食べ物かと期待して聞くが、アムは首を振る。
「鳥を酩酊させる気体のようなものだ。人間には害が無い・・・が、効果が出るまで時間がかかる」
そう言うとアムはごろりと横になった。
「え、寝るの?こんな森の中で?」
「大丈夫だ。少しだがおまえも休め、サラ」
休めと言われてもお腹が空いて眠れない・・・。それにこの森にどんな動物がいるかも分からないのに、グースカ眠れるわけも無い。意外とアムの神経は太いのだろうか・・・。
そのアムはもうすっかり目を閉じて微動だにしない。え、うそ。もう寝てる?
あたしはそっとアムに近づいた。
至近距離でその顔を見れば、この男、睫がべらぼうも無く長いことが分かる。しっろい肌に、睫の影が長く落ちる。起きている時はあんまりわかんないけれど、寝ている顔は静かで、ちょっとだけ綺麗だな、と思った。
カルミナ族はみんなこんなに睫が長いのだ
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