良い人と姉
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え、なに、なに・・・。
なんなの、それじゃあなに、この男、とんだ最低野郎だと思ってたけどそうじゃなかったってこと・・・?しかも、ちょっといい人・・・?
はち切れんばかりだったあたしの怒りが、針を刺された風船のように急速にしぼんでいく。
「えっ、えっ、えっと・・・」
こうして下手に出られるとどうしたらいいかわからない。
「・・・あたし、何か誤解してたみたいで・・・あの、その・・・こちらこそ失礼なこと沢山言ってスミマセンデシタ・・・」
あたしは素直にぺこりと頭を下げた。
ああつくづくあの棍売っぱらっちゃう前で良かった・・・。取り返しのつかないことになるとこだった。
「いい。それと敬語はよせ。俺はおまえよりも年下だ。多分」
「はァ!?」
あたしは驚いて声を上げた。目の前の男はどう贔屓目に見ても・・・あたしより二つは上に見える・・・。
と、言うことはナンだ。あたしがもの凄い年上に見えていると言うことだろうか。
「あのね!あんたにあたしが何歳に見えているか知らないけど、あたしは!まだ!十七歳なんですからね!?」
「そうか。おまえに俺が何歳に見えているかは知らないが、俺はまだ十六だ」
う、そ・・・!
あたしは驚きに言葉を失って、ただ目の前の男をまじまじと見た。
じゅ、じゅうろく・・・!この落ち着き払った男が、あたしのかわいいノエルと同い年だって言うの?
ノエルのつるりとした肌や、キラキラした瞳を思い出す。
ああ、ノエル・・・同じ十六歳なら、癒やし系のノエルがいれば良かったな・・・寂しがってないかな・・・。
あたしはノエルを思い出してしゅんとして、それから金貨とメロンと新しい宿のことを考えた。
もう今から町に戻るのは無理だ。そうすれば、あとはあたしはこの真っ暗な森で、できることをするだけ。
そう、ルッペンを倒して金貨を手に入れると言うね!
「そいやあんた名前は?いつまでもあんたじゃいけないわよね」
「名?」
男はふと口を噤んだ。奇妙な間が開く。自分の名前なんて考えるまでも無く分かることだから、男が思案しているのは本当の名をあたしに明かしても良いかだろう。
「何なの、そんなに言えないぐらい恥ずかしい名前してるの」
あまりにも男が黙り込むので、あたしはそう言って茶化した。
「・・・いや、そう言うわけではないが」
歯切れが悪い。あ、忘れていた
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