良い人と姉
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みツラみがあるんだった。それなのになぁにをノンキに談笑しているんだか。
あたしを引きながら草の原を抜け、平地に出た男は野営でもしようとしているようで、落ちている枯れ枝を拾う素振りを見せる。
「ちょっと!」
あたしは怒りも新たに拳を握りしめた。ずっと繋がれていた男の手をぺいっと振り払う。
男はちらりとあたしを見た
「あたし、怒ってるんですからね!?協力するのは良いとして、あんた、とりあえず一言ぐらい謝りなさいよ!」
「なぜだ」
悪びれも無くそんなことを言う男に、あたしの怒りは否応なしに増す。
「なぜ、なぜかって!?昨日の今日の事なのに、イチイチ言わなきゃ分からないわけ!?この鳥頭!いい、よーっく聞きなさいよ!まず、あんたはその棒で、あたしのお腹を殴って突き飛ばした!」
「あれは・・・」
男が眉を顰めた。思い出したみたいだ。ふふん、このまましらばっくれなんてさせないわよ!
あたしは鼻息を荒くした。しかし、次に口を開いた男は意外なことを言った。
「あれは・・・ああしなければ、おまえが馬に蹴り殺されていた」
「ほ、へ?」
「乱暴だったのは認める。が、声で忠告していたのでは間に合わない距離だった。とにかく怪我をさせたくない一心だった。・・・痛かったか?」
まるで労るようなその言葉を聞いても、あたしの頭が思ってもいなかった展開に着いていけない。
ぽかんと口を開けるあたしを余所に、男は集めた枯れ枝に火をつけた。
ぽ、と暗闇に灯った光に我に返ったあたしは、慌てて言葉を紡ぐ。
「で、だ、だって・・・そ、そうよ!石飴屋のおじさんが追いかけてきた時、あたしを置いて逃げようとした!」
「石飴屋?いつだ?」
「あんたがあたしの桃を買い占めた直後よ!あたしを担いだでしょ!荷物か何かみたいに!」
「・・・あれは、石飴屋では無いぞ」
「へ?」
「そういうことか。道理で連れて行けとうるさかったわけだ・・・」
男は深く深く溜息をついた。
「ちょっと、一人で納得しないでよ」
あたしは男の長い外套の裾を引っ張った。
「なぜ石飴屋と勘違いしたのかはわからんが、あれは俺を追うものだ。だから、巻き込まないよう、離れようとしたのに、おまえは・・・」
男がもう一度、大袈裟なぐらい大きな溜息をついた。
「まぁどれもこれも女の扱いとしては乱暴だったのは認める。本意では無い・・・悪かった」
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