暁 〜小説投稿サイト〜
あいらぶらざー!
良い人と姉
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
みツラみがあるんだった。それなのになぁにをノンキに談笑しているんだか。



 あたしを引きながら草の原を抜け、平地に出た男は野営でもしようとしているようで、落ちている枯れ枝を拾う素振りを見せる。



「ちょっと!」



 あたしは怒りも新たに拳を握りしめた。ずっと繋がれていた男の手をぺいっと振り払う。



 男はちらりとあたしを見た



「あたし、怒ってるんですからね!?協力するのは良いとして、あんた、とりあえず一言ぐらい謝りなさいよ!」



「なぜだ」



 悪びれも無くそんなことを言う男に、あたしの怒りは否応なしに増す。



「なぜ、なぜかって!?昨日の今日の事なのに、イチイチ言わなきゃ分からないわけ!?この鳥頭!いい、よーっく聞きなさいよ!まず、あんたはその棒で、あたしのお腹を殴って突き飛ばした!」



「あれは・・・」



 男が眉を顰めた。思い出したみたいだ。ふふん、このまましらばっくれなんてさせないわよ!



 あたしは鼻息を荒くした。しかし、次に口を開いた男は意外なことを言った。



「あれは・・・ああしなければ、おまえが馬に蹴り殺されていた」



「ほ、へ?」



「乱暴だったのは認める。が、声で忠告していたのでは間に合わない距離だった。とにかく怪我をさせたくない一心だった。・・・痛かったか?」



 まるで労るようなその言葉を聞いても、あたしの頭が思ってもいなかった展開に着いていけない。



 ぽかんと口を開けるあたしを余所に、男は集めた枯れ枝に火をつけた。



 ぽ、と暗闇に灯った光に我に返ったあたしは、慌てて言葉を紡ぐ。



「で、だ、だって・・・そ、そうよ!石飴屋のおじさんが追いかけてきた時、あたしを置いて逃げようとした!」



「石飴屋?いつだ?」



「あんたがあたしの桃を買い占めた直後よ!あたしを担いだでしょ!荷物か何かみたいに!」



「・・・あれは、石飴屋では無いぞ」



「へ?」



「そういうことか。道理で連れて行けとうるさかったわけだ・・・」



 男は深く深く溜息をついた。



「ちょっと、一人で納得しないでよ」



 あたしは男の長い外套の裾を引っ張った。



「なぜ石飴屋と勘違いしたのかはわからんが、あれは俺を追うものだ。だから、巻き込まないよう、離れようとしたのに、おまえは・・・」



 男がもう一度、大袈裟なぐらい大きな溜息をついた。



「まぁどれもこれも女の扱いとしては乱暴だったのは認める。本意では無い・・・悪かった」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ