良い人と姉
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カルミナ族だった!
「えっ、まさかあんたがルッペンなの!?でやぁカクゴぉー!」
「そんなわけあるか!おい、やめろ!」
男はあたしが引こうとした棍をがっしりと掴んだ。
「ちょっと!離しなさいよ!」
「これは俺のものだ。返して貰おうか」
「いーやーよ!あたしが拾ったんだからあたしのものでしょ!」
あたしの言葉に男は不快そうに眉を上げた。あたしも負けじとできるだけ不穏な顔を作る。
そのまま、あたしと男は睨み合った。
あたしは無言でぐいと棍を自分の方に引いた。すると男は大人げなくも同じだけ、棍を引き戻す。あたしはまた引く。男はそれを戻す。
ぐい、ぐい、ぐい、ぐぐい。
「・・・」
バチバチと火花が散る。互いに譲る気はないのは明らかだった。
そんな不毛な争いをどれだけ続けただろうか。ゲコォと足下の蛙が退屈そうに鳴いて、あたしはふと我に返った。
「・・・わかった。じゃあ、これあんたに返してあげる。でも!そのかわり、ルッペン退治手伝いなさいよ!それが条件!」
こんな生産性のないことをいつまでも続けていられるほどあたしは暇じゃない。何せ宿では可憐なノエルが姉さんを案じながら震えているだろうし、そもそもこれが大事なものなら返してあげるぐらいの心の余裕はある。あたしが欲しいのは金貨であって棍ではないのだから。けど、どうもこのカルミナ族には色々されたせいか対抗心が出る。タダで返してなんてあげるもんですか。べー。
「ルッペン、退治?」
「そう、ルッペン。知ってる?」
「勿論知っているが・・・妙だな。なぜおまえが退治など?」
「え?お金欲しいの。大事な弟のために」
あたしはあっけらかんと言った。別に隠すことでも無い。
「・・・」
男は、不意にぐいと強い力で棍を自分の方に引いた。あたしは完全に油断していたので、それはあたしの手からあっけないほど簡単にするりと抜ける。
「あっちょっと!」
慌てて掴もうとしたが、男はそんなあたしをひょいと避けると、さっさと自分の腰にその棍を刺してしまった。
「卑怯者!いきなり引くなんて!」
モノ質をとられてしまったあたしはきぃきいと叫んだ。
「サッサと行くぞ」
しかし男は、無遠慮にあたしの手を掴むと、歩き出した。
あたしは状況がつかめなくて、握られた手と、マントに覆われた広い背中をまじまじと交互に見た。そしてそれから、ようやく口を開
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