第4話「プロポーズは1回で決めろ」
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だが、楽しい時間ほどはやく終わってしまう。
「ほな、ワイらはここで」
岩田が足を止める後ろで、歩いていた侍たちがほぼ半分の人数に分かれ始める。
奇襲は至る所から攻めた方が効率が上がる為、より人数を拡散して攻撃を仕掛けた方が良い。高杉率いる鬼兵隊も別の側から攻める為、一足早く戦地に向かっていた。
そして岩田もまた、銀時たちから離れ別の方向から攻めこみに行く。
「気をつけるんだぞ」
「桂はんもヅラ取れんように気ィつけなはれ」
「大丈夫だァ。ヅラは接着剤でズレねぇようにしてっから」
「せやったな」
「違うぞ!お前らいい加減にしろ!!」
桂の怒鳴り声が響くが、岩田は笑って流し、銀時も気にせず無視した。
そうして、別れの時は訪れる。
ほな、と岩田は手を振って歩こうとした。しかしその時、一人の少女が前に出た。
「おい、双葉」
「そっちは兄者達がいれば充分だろ」
双葉は銀時とは別の――岩田たちと同じ方向に歩いていく。
いきなりの行動に男三人は驚いた。だが岩田は嬉しそうに銀時へ振り返って告げる。
「お義兄さん、心配無用や。妹はんのことはワイに任せといてや」
明るい笑顔を見せて、岩田も銀時たちから去っていく。
自分の元から離れていく妹の姿を、銀時は憂鬱そうに眺めた。
「銀時、妹が心配か」
怪訝そうに桂が尋ねる。
「アイツはそこらで潰れるタマじゃねーよ」
「ああ。俺たちが思ってるほど、双葉は弱くない。岩田もああ見えて実力はある男だ」
「……だな」
桂に促され、しかしどこか引っ掛かりを感じつつも、銀時は頷いた。
そして彼もまた戦地へ歩いていく。
見えない所で惨劇が起こるなど知らずに。
誰もが武装に仕組まれた鉄の重さを感じて歩く中、岩田は軽やかに足を弾ませていた。
「いや〜双葉はんがワイのとこに来てくれて嬉しいわ〜」
「勘違いするな。お主の戦いぶりを見たくなっただけだ」
「それでもごっつう嬉しいでっせ。お義兄さんと離れて寂しいはずやのに」
「なぜそこで兄者が出てくる?」
「いやいや。なんでもあらへん」
何か見知ったような表情を浮かべながらも、岩田は曖昧に誤魔化した。
「でも安心してや。いざとなったらワイが――」
「護る必要はない」
岩田の発言を遮るように双葉は冷たく言った。
対する岩田は「ちゃうちゃう」と首を横に振る。
「あんさんみたいな気ィの強い女、護られるこたあらへん」
「じゃあ何だ」
「ワイが支えたる」
岩田はいつになくキリッとした表情で宣言した。
「支える?」
「支えるぐらいやったらええやろ」
「……勝手にしろ」
にっこりと笑う岩田に、双葉は呆れたように呟いた。
それはまるで彼の発言に頷いたような響きだった。
=つづく=
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