第4話「プロポーズは1回で決めろ」
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は思ったのだ。
彼の笑顔も護りたいと。
去っていく彼女を、岩田は情けない声で呼び止める。
「待ってェな、双葉は〜ん」
止まらず去って行ってしまう。
岩田はがっくし肩を落として地面に座り込んだ。
「はぁ〜。フラれてもうたかな〜」
意気消沈したかのように溜息をもらすが、
「でもまぁ、ええわ。チャンスはいくらでもあるやろ。絶対チューしたる」
素っ気なく明るくなって、岩田は夜空を見上げた。
そんな叶いもしない望みを呟きながら。
* * *
重く暗い鉛色が広がる空の下。
武器を備えた男達は戦場へ向かい、双葉も兄達と同じように武装に身を固め歩いていた。
無論、天人をこの国から追い返しに行くためである。
打倒天人を中心に戦いを続けているが、兵士の数においても武力においても圧倒的に敵の方が上であった。刀や槍などといった接近戦の武器しかない侍と違って、天人は遥か高度な文明で造られた砲弾を備えた艦隊を幾つも持っている。また超越した身体能力の彼らとまともにやり合えば、すぐに勝敗はついてしまう。
だがどんなに高い武力でも、隙を突けばもろく崩れ去るものだ。戦闘準備がままなっていない場所を攻めれば戦況は変わる。
故にこの時代の侍たちは、奇襲を仕掛けて敵を混乱させるゲリラ戦を主な攻め方としていた。
ただ、これは小競り合いにしかならない。いわば終わりの見えない戦いだ。
しかし国のため、あるいは大切な人のために、男たちは戦い続ける。
そうして戦いに身を注げる侍たちは、いつも張り詰めた空気の中にいた。
だがそんなの全く気にしてないかのように、銀時は軽くあくびをする。
「緊張感のない奴だ」
隣で歩く桂が呆れたように言った。
これから命を落とすかもしれない戦地へ赴くのに、銀時には気怠い雰囲気しかない。
「気を抜くなよ、銀時」
強めな声で桂は警告するが、銀時は彼にとって最も失礼な言い方で返す。
「てめェも足引っ張んじゃねぇぞ、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ!」
額に図太い血管を浮かべて桂は怒鳴るが、銀時は生返事するだけ。
その態度にさらに怒りがこみ上げる桂に、岩田が横入りしてきた。
「まぁまぁヅラはん。そないに怒っとったら血登って頭がパーンしちゃいまっせ」
「だから桂だ」
「わかってまっせ〜桂はん」
「桂じゃないヅラだ!いや違う違う、桂だ」
生真面目にキッチリと言い直す桂。その様がおもしろいのか岩田は笑い出し、周囲の侍達もつられて笑いがこぼれた。張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。
その後も岩田は何かとフザけたことを言ったりボケたりたまにツッコんだりし、その度に場の雰囲気は和んでいく。彼らの笑顔を眼にして、男の中に混じっていた少女もまた心の緊張が解れていった。
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