第4話「プロポーズは1回で決めろ」
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かった。
「せやけど目指す場所が同じやったら、いくらでも仲直りできまっせ。それは天人はんも同じはずや。せやから今は刀交えとる天人はんたちとも笑える日が来ますやろ。ワイはその日が来るまで護りたいモン護るだけや」
「………」
意気揚々と語る岩田。双葉は内心複雑だった。
天人と笑える日?そんな日が本当に来るのだろうか。
今の自分にとって『天人』は大切なモノを奪っていく憎む以外の何者でもない。
そんな奴らと笑いたいと思えない――そう考える彼女の表情は暗く沈む。
「双葉はんどないしたんでっか?」
「……いやなんでもない」
心配そうに岩田が顔を覗きこんできたが、双葉は口にしないでおいた。膨らみ続ける胸の憎悪で、岩田の笑顔を崩したくなかったからだ。
彼女のそんな気持ちを知らない岩田は、的外れな発言をする。
「もしかして高杉はんのこと考えてて、今のワイの話聞いてなかったんでっか!?」
「……かもな」
「嘘やろ〜。せっかくええ話して惚れさせよう思っとったのに〜」
「そんなので私は惚れない。……だが今の話は悪くないぞ」
「なんや聞いとったんやないか。冗談悪いでっせ」
文句を含んでるものの、岩田は笑みを浮かべながら言う。
「でも今のでちょっと惚れたやろ?」
「ないな」
双葉はあっさり言った。
「だいたいお主は信憑性がない。そうやって軽々しく『好き』だの『惚れた』だの言われても何も――」
そこで双葉の言葉は急に途切れる。
後ろから静かに抱き締められたからだ。
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「ワイは本気やで。ホンマにあんさんに惚れとるんや」
岩田は双葉の耳元で囁く。
次にそっと彼女を自分と向き合わせる。
目の前にいるのは、刀を振るい勇ましく戦場を駆け抜ける一人の侍。
だがそうでなかったら、一人の少女だ。
丸みある輪郭の顔と、未だ熟してない端正な容姿。
胸だけは極めて熟してるが、それ以外を見ればまだ成人になり切れていない少女。
一人の男としてこの少女を支えたい、と岩田は思う。
彼はまだ幼さが残る瞳を優しく見つめ、彼女に顔を寄せる。そして――
“ボカッ”
「アイタタタ。……やっぱチューは駄目でっか」
岩田は殴られた頬をさすりながら苦笑めいた。
対する双葉は、キスされるような隙を与えてしまった自分に恥じらいを感じているのか、振り切るように彼から顔を背ける。
そして、そのまま何も言わず砦へ戻っていく。
不機嫌に顔をしかめる双葉。だが、内心は思うほど嫌な気分にはなっていなかった。
誰かを幸せにできる笑顔と彼が戦う理由。
今日話して『岩田光成』という男に対する気持ちが少しだけ変わった。
それが恋愛的に変わったかどうかは別として。
ただこの時、双葉
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