第4話「プロポーズは1回で決めろ」
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めた。
「そりゃおかしいで〜。笑顔護る言っとる人が笑っとらんでどないすんの?」
「……兄者にも言われたよ。でも何だか笑う気になれなくてな」
溜息混じりに肩をすくめる双葉。
怠け者の銀時を叱るため、幼い頃から仏頂面を通してきたせいかもしれない。
「なら安心してや。ワイが近いうち絶対笑わせてみせますわ」
岩田は得意げに宣言した。
双葉は苦い表情を浮かべるが、そこに不機嫌な色は混ざっていなかった。
「にしても笑顔を護るためでっか。ええ話や。スマイル&ピースやな」
「そういうお主はなぜ戦う?」
「ワイでっか?」
自分を指差して聞き返す岩田に、双葉は小さく頷く。
すると岩田は妙にたくましさに満ち溢れた顔で答えた。
「ワイは姉ちゃんのためや」
「姉の?」
「せや。ワイの姉ちゃん大阪におるんやけど、身体弱くて根暗で塞ぎこんどるんや」
明るい口調で語られたのは、実に暗い話だった。
岩田の姉は生まれつき身体が弱く、おまけに幼少時に天人の暴行を受け、極度の天人恐怖症になってしまったという。それが原因で卑屈になってしまい、治療にも専念できず、岩田の姉は日々弱っていくしかなかった。
岩田はそんな姉が治療に励んでもらえるよう、この攘夷戦争に参加したという。
「ワイも頑張っとるから姉ちゃんも頑張ってやって、元気づけてやりたいんや」
「……姉想いなんだな」
「いやいや。双葉はんには敵いまへんて」
双葉はその意味が分からず、首を傾げた。だが、岩田は深くは語らなかった。知らない方が彼女のためだと思ったのだろう。こういう所は良く気が利く少年である。
話を逸らしてから、岩田は真っ直ぐな眼で夜空を眺めた。
「不思議なもんやな。あんさんは笑顔のため、ワイは姉ちゃんのため、みんなは国のため。《ワケ(理由)》はちゃうのにみんな肩並べて戦っとる。ワイ、思うんよ。歩む道はちゃうても、目指す場所は同じやて」
「同じ場所?」
「みんな『護る』ために闘っとるやん」
この夜空に輝く一億の星と同じぐらい人がいる。その数だけ出会いがある。
すれ違うだけで終わっていたかもしれない人と人が、共に力を合わせて闘っている。
それぞれ理由は違うが、誰もが何かを『護る』ために闘っている。こんなに多くの侍がいても『想い』が通じていることに、岩田は神秘的なものを感じるのだ。
「想いは同じということか」
「せやからみんな仲良うできて一緒に戦えるんや。まぁ、人生山あり谷ありで喧嘩してしまう時もありますわ。もしかしたらバラバラな道歩むはめになって、いがみ合うようなってまうかもしれへん」
「まるでこれから私たちが敵対するみたいな物言いだな」
溜息をつきながら双葉は言った。
実際、遠くない未来でそれは現実となるが、今は冗談めいた言葉にしか聞こえな
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