第百十九話 甘い紅茶
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小さい花が咲き乱れる花畑に一輝と共にこっそり抜け出して来たカリム。
フードを取ると悪戯な笑みを浮かべていた。
一輝「それにしてもお前見た目によらず無茶するな。こっそり抜け出すために抜け穴を作ってたなんてよ?」
神に仕えるはずの彼女が抜け穴を作っていた上に一輝と一緒に抜け出したことに一輝も面白そうに笑う。
今頃シャッハが血眼になって探している頃だろう。
いつもは冷静な彼女が取り乱すサマを想像して一輝はそれを面白そうに笑っていた。
カリム「もう、一輝さんったら、笑いすぎですよ」
一輝「いやいや、抜け穴作って脱走をした騎士様に言われたくはありませんな」
カリム「ふふ、そうですね」
クスクスと笑うカリムにクックッと笑う一輝。
しばらく笑うとカリムは水筒を取り出した。
カリム「一輝さん。ミルクティー作ったんですけど飲みますか?」
一輝「おう。それで俺もサンドイッチ作ったんだ。丁度腹も減ったし飯にしようぜ」
クリームとあんこが挟まっているサンドイッチ。
甘い物が大好物の一輝にとって好んでよく食べる物だ。
カリム「はい!!」
彼女も甘い物は嫌いではないし、それに走ったことで疲れているため、サンドイッチを口にした。
一輝「美味いか?」
カリム「はい、生クリームの甘さが抑えられていて、あんことの相性が抜群です」
一輝「そいつはよかった」
カリムが入れてくれたミルクティーを飲む一輝。
カリム「一輝さんに会って色々勉強になりました。一輝さんは色々なことを知っているんですね?」
一輝「…まあ、将来のためにな。いい学校に行って、いい職場に就く。それだけだ」
カリム「私は幼い頃から教会にいましたが、一輝さんはどうだったんですか?」
一輝「俺?光が丘テロで家族を失うまではそこら辺にいる悪ガキだったよ。大輔に色々悪戯を伝授してたけどな…懐かしいぜ」
家族を失うまでは、とてもとても幸せだった。
自分を愛してくれる両親。
姉みたいなジュン。
一緒に馬鹿やれる弟分の大輔。
光が丘テロで全てを失ってから全ての景色が灰色となった。
自分から全てを奪ったあのデジモンと兄妹が憎くて仕方がなかった。
今はもう過去の記憶としてそんなこともあったと言える余裕は出来たけれど。
カリム「一輝さん?」
一輝「ん?いや、何でもねえよ。さて、とっとと帰るか。シャッハの奴が怒りのあまり奇声を発する頃だろうよ」
カリム「…はい」
一輝がカリムに手を差し出す。
カリムがその手に自分のそれを重ね合わせる。
その一輝の背中を見つめながら、カリムはこっそりと溜め息をついた。
一輝は上手く誤魔化したつもりだったのだろうが、カリムにはちゃんと分かっていたのだ。
光
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