第二十一話
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優しく笑っていた。なんだかその顔はお母さんに見えて、不思議なもんだと思う。
実際の母親はこんなに優しくは笑ってなかったような気がするけど。
「あまり体調が思わしくないのですから無理はなさらぬよう……ゆっくりとお休み下さいませ。
こちらのことは気になさいませぬよう」
これ以上無礼を働かれても困るので、強引に小十郎を布団に横にして寝るようにと促す事にする。
一応これで刀を振り回すことはないとは思うけど、流石に二度目は……ねぇ?
「小夜殿、何かあれば遠慮なく言って下さいませ」
「ありがとうございます、まつさん」
利家さんの首根っこを掴んで引き摺ってまつさんは部屋を出て行った。
褌が引き摺られてずり落ちかかっていたのには、あえてもう触れないことにした。気にしたら負けだ。気にしたら。
「……小十郎、駄目だってば。人の家で刀振り回しちゃ」
「申し訳ありません、てっきり露出狂がいると」
「……まぁ、初めて見た時は私も刀振り回したけど」
知ったら刀振り回すだろうから小十郎には言えないけど、最初に見た時は野外だったからねー……絶対に露出狂だと思ったし。
けど助けてくれた人に刀向けるのは恩知らずと言われても反論出来ないよ?
つか、そんなことやったなんて姉に知られたら……死亡フラグどころの話じゃない。
骨すらも残らないで消滅しそうな気がするし。
「一眠りしなって。実は相当辛いんでしょう?」
ともかく、この件はここまでにしておいて小十郎にはしっかり休んでもらわないと。
あまり穿っても良いものでもないわけだし。
「……すみません」
申し訳なさそうに謝る小十郎の布団をしっかりと掛けてあげる。
「いいって。今日はここにいるから安心して寝てなよ」
「いくら兄弟とはいえ、それは」
「一人じゃ心細いでしょ?」
畳み掛けるように言えば、小十郎は渋い顔をして黙ってしまった。
全く何年一緒にいると思ってんの、分かってるんだから。そんな見た目に反して結構寂しがりなところがあるってのもね。
ちっちゃい頃は私にべったりで何でも話してくれたのに、ある程度になってからは
何かあっても私に言わなくなっちゃったもんだから、こっちは察してやるので大変だったりする。
具合悪くても基本的に無理する性質だから、強引に休ませたりと結構気を使ってんだよ。本当に。
分かってんのかしらねぇ?
「子守唄でも歌ってあげようか」
少しばかりからかうように言うと、小十郎が更に渋い顔をする。
「……それは結構です」
「小さい頃はよく歌ってあげてたのに」
「…………」
更にからかうように言えば、小十郎は押し黙ってしまった。
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