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詩集「棘」
束の間の静寂

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もう誰かを愛さない…
そう堅く心を閉ざしてた
辛い記憶に苛まれ
創り笑顔で自分を誤魔化し…

こんな風になるなんて…予想もしていなかった
気安く触れてくる君の手が…
幾重もの僕の扉を
まさか…全て壊して行くなんて…

束の間の静寂…
それはほんの一瞬の出来事
君が好きだと知った僕は
この世界から…取り零された…
廻り逝く刹那…
虚無の中から突然に湧き出す
君の全てをほしいという欲望に
ただ茫然と…立ち尽くすだけ…


愛とは時に甘く香り
愛とは時に猛毒となる
気付いた僕は…


いずれ斃れる時が来る…
その時僕は誰を思い出す?
笑った君が大好きで
取り留めもなく思い出すに違いない…

浮かんでは消えてく…君と過ごした日々を
抱くしか出来ない僕の腕は…
溢れてく記憶の断片(カケラ)を
ただ必死に…掻き集めている…

束の間の静寂…
それを破られるまでは気付かずに
僕の心の奥底で…
ただひっそりと…待っていたんだ…
廻り逝く刹那…
引き裂かれそうな心の叫び
君を誰にも渡したくない欲望に
ただ茫然と…立ち尽くすだけ…


僕の静寂を奪ったのは…

君だよ…




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