第一部
第五章 〜再上洛〜
六十三 〜州牧〜
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今後の事は、稟と風、詠の間で決めておくように指示し、私は麗羽の元を訪れた。
「お師様。……おめでとうございます、とは申し上げられませんわね」
「やむを得まい、今度こそ、勅命だ」
「……ええ。それで、冀州の事ですけど」
刺史は既に亡く、郡太守でしかなかった麗羽。
統治するにもその支配域はあまりにも広大であり、いくら朝廷の命と言えども、一朝一夕に纏め上げるのは困難であろう。
刺史から牧になる華琳や睡蓮、馬騰らと違い、その点は立ち遅れが否めぬ。
「本拠はギョウとする方が良かろう」
「わたくしもそう思いますわ。お師様が築き上げた城、しっかりと守るのがわたくしの宿命ですから」
「そうだ。だが、今度は魏郡や渤海郡だけの事ではない。冀州全ての民が、お前の差配一つで運命が変わる」
「……大丈夫でしょうか」
溜息をつく麗羽。
「弱気は禁物だぞ」
「わかっていますわ。……でも、わたくしはお師様のように見事に勤め上げられるかどうか」
……やはり、今のままでは荷が重いか。
だが、辞退する事も許される筈がない。
州牧を務められる人材となると、文だけではなく武も求められる。
今の麗羽がその双方を兼ね備えているか、となると心許ないが、さりとて望みが皆無な訳でもない。
「麗羽。いずれにせよ、引き継ぎも必要であろう」
「引き継ぎ?」
「そうだ。魏郡に本拠を置くならばな。郡太守である私がいなくなるのに、何もわからぬままでは不都合が多かろう?」
「……そうですわね。お師様、では一度冀州へ参りましょう」
「うむ。麗羽、お前から奏上してくれぬか? 私が申せば角が立とう」
「はい」
「……まだ、お前に師らしき事は何一つしてやれておらぬ。せめて、道中に幾許か、話を致そうぞ」
「本当ですの?」
麗羽が、嬉しそうに言う。
「ああ。剣の稽古も、少しばかりだが付き合うぞ」
「お願いしますわ、お師様。わたくし、頑張りますから」
「……あまり、張り切り過ぎぬようにな」
思わず、苦笑を浮かべてしまう。
さて、更に問題が山積してきたが……。
一つでも、減らしていかねばな。
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