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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
六十三 〜州牧〜
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何故か、二人は楽しげに馬超に近寄る。
「な、何すんだよ?」
「少しばかり、染みるやも知れぬ。暴れられては困るからな」
「あ、あたしはそんな子供じゃないぞ!」
 耳まで赤くしながら、馬超は後退り。
 ……しようとするが、鈴々と猪々子が抑え込んだ。
「よ、止せよ!」
「すぐに済む。……ああ、済まぬ」
 斗誌から酒甕を受け取り、栓を抜いた。
 そのまま呷り、馬超の手に吹き付ける。
「う、うわっ! 何すんだよ!」
「消毒だ」
「し、消毒って……」
 何やら口ごもる馬超に構わず、麻布を傷口に巻き付けていく。
 本来は綿布や油紙でも挟みたいところだが、生憎とそのような物はない。
「よし、こんなものだな。幸いに浅傷のようだ、布を一、二度換えればそれで良かろう」
「…………」
「む、如何致した? 傷が痛むか?」
「……い、いや……。あ、ありがと……」
 惚けたような馬超の顔は、妙に艶っぽいな。
 などと思っていると、背後から視線を感じた。
 ……と申すか、その場の全員が、私と馬超を見ているようだが。
「ああ、わたくしも何やら眩暈が……」
 ……麗羽、芝居をするならもう少し精進せよ。


 崔烈の言葉は、真であった。
 翌朝、正式な勅使が訪れ、八校尉の解散を告げられた。
 同時に、新たな人事も発令された。
 華琳はエン州牧、麗羽は冀州牧、睡蓮は揚州牧、馬騰は涼州牧という具合に。
 ……そして、私と月も例外ではなかった。
「お兄さんは交州牧ですかー。月さんは太師に任ずる、とありますね」
「歳三殿は一見昇進に見えますが、完全な厄介払い、とい事でしょうね。月殿も昇進ですが、太師は最高位とは言え名誉職……実権は奪う、という事ですね」
「巫山戯るな! ご主人様が何をしたというのだ!」
「月様とて! 理不尽な仕打ちを受ける謂われは一切ない!」
 案の定、愛紗と閃嘩(華雄)は真っ先に激怒。
 ……いや、この場にいる全員が、腹を立てている。
「稟。交州とは?」
「はい。かつては南越国、という地でした。今は征伐され、十三刺部の一つとして組み込まれていますが」
「この大陸、いや漢王朝の支配が及ぶ南端ですな。……余程、主の事を恐れたのでしょうな」
「じゃあ、魏郡には帰れないのか?」
 鈴々の言葉が、空しく響く。
 ……そう、あの魏郡にはもう、戻れぬのだ。
 皆の、血と涙と汗の結晶。
 漸く、皆と安住出来る地を得たと思った矢先に、この仕打ちか。
 ただ、信じ合う仲間と共に過ごす為には、力と実績が必要であった。
 それ故、何度も死地を潜り抜け、苦難を乗り越えてきた。
「あんタマなし共が、どこまで小狡けりゃ気が済むんや!」
「でも、これは正式な勅命。……ボク達には、逆らう事は許されない」
「……また、離れ離
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