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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
ニ十二話 世界最強の少女
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用して相手の突進にタイミングを合わせ、ひざ蹴りを叩き込むと言うのがセオリーだ。相手が受けるにも其れが一番やりやすいだろう。だが……

「(ジークリンデさんがそれをただガードしてくれるか?)」
いや、とクラナは思い直す。余りにも基本的すぎるからだ。教科書通りの戦術と言うのは、誰にとっても効果があると納得できる故に最もポピュラーなのであり、その戦術は当然正しく、最も効果の高い物である事が多い。だが同時に、当然の如く相手にとっては最も読みやすい戦術だ。これほど使い古された捌き方に対する返しを、彼女が持ち合わせていないと考えるのはあまりにも安易すぎる。

「(それならっ……!)」
数瞬後の刹那、クラナは跳んだ。

「なっ!?」
既にクラナとの距離が4mと迫り、あと一歩と言う所まで迫った時、ジークリンデは思わず声を上げた。クラナの姿が、突然上方に消えたからだ。青い髪のその少年は、地上から3mも無いような極低空で超高速の空中前転をしたかと思うと、突進してきたジークの後頭部に向けて、踵落としを繰り出してきたのである。

前傾姿勢での突進にとって上方からの攻撃は咄嗟の対処が非常に難しい。ガードするには十分に腕が上がり切らず、かつ、静動を掛けるには既に間に合わない。

「ならっ!」
「せぁッ!」
咄嗟の判断に従って、ジークリンデは右腕を上げた。クラナの踵落としは確かに、此方はガードしにくく、かつその間合いに飛び込むことを回避するのも難しい。ならば突進の勢いを潰さない攻撃で、相手の攻撃を迎撃する。
踏み込んだ右足を軸に身体を跳ね上げ、右腕を振りあげる。衝突した右の掌底と右足が一瞬だけ拮抗し、しかし即座にクラナの身体がジークリンデの後ろへ向けて吹き飛んだ。半ば彼女の技を足場にする形で前方へと再び跳んだ彼とジークリンデの視線が、一瞬だけ交錯し、殆ど同時に背中合わせに着地する。

「「ッ!!」」
お互いに、此処で背中を取られる事だけは避けなければならない。即座に考えることが一致したのは、彼等が格闘選手であるゆえだろうか?
何れにせよ二人は殆ど同時に、自らの右腕を相手に向けて振り向きざまに繰り出し。激突させた。

「(凄い……)」
その拳の一撃だけでも分かる。目の前の人物が、どれだけの力と技を持つ格闘家であるのか。映像でみるのとも、話で聞くのとも圧倒的に違う。自らの肌が、拳が情報を伝えてくれる。
目の前にいる人物の、圧倒的な強者としての気配……

「流石、です」
「ううん、君こそ……!」
互いにうち止められた拳を引いて、距離を取る。クラナが顔を上げると、ジークリンデの顔にはこれまで以上に屈託なく、ただただ裏表の無い楽しそうな笑顔が浮かんでいた。

「もっともっと打ち合お!ウチ、今凄く楽しい!キミのこと、もっと知りたい!」

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