短編31「天井の女の子」
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ばれて顔を出したら、私が居た教室だったの」
僕の知っている限り、この学校でそういった話は聞かなかった。
「もしかして、昔の学生?」
天井の女の子はうなずいた。
「もう、20年も昔の話。……アナタに会えて良かった。同じ思いが私を助けてくれたの。本当に……ありがとう」
そう言うと、少しずつ天井に引っ込み始めた。
「そういえば、さっきのキス。私のファーストキスだから」
「えっ!?」
天井の女の子は、上半身だけになると……
「バイバイ」
と、逆さのまま僕に手を振り、スッっと天井に消えていったのだった。その声を最期に、幽霊の気配はなくなってしまった。
後夜祭では学年一の女の子と過ごした。目の前では、炎が高々と燃えていた。炎でユラユラと揺れる影と、オクラホマミキサーのメロディーが僕らを包んだ。僕はその炎を見ながら小さな声でつぶやいた。
「誰か、タスケテ……」
無意識のうちに言っていた言葉。
「うん?何か言った?」
学年一の女の子が僕を見て、幸せそうに目を細めていた。その瞳の中には僕がいたのだった。
その後、また幽霊に会いたい気持ちはあった。放課後、誰もいない教室で、天井に向かって呼んでみたが、天井の女の子は現れる事はなかった。 そして……
『もう成仏したのだし、呼び出したりしては良くないな』
と、思って僕はもう、言うのをやめたのだった。
『誰か助けて』
の、言葉も。
おしまい
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