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極短編集
短編30「最重要接待」

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 今日は遊園地で接待だ。俺は時計に目をやった。

「そろそろ来るな」

 社長じきじきの指示の元、俺は重要な接待相手を待っていた。
 俺は、子どもが出来たあたりから、重要な仕事を任されるようになってきた。それからはなかなか帰れず、家庭をかえりみない状況になっていた。それに伴い俺の役職も昇進し、気付けば課長になっていた。そして気付かぬうちに、子どもも大きくなっていた。

「ねえパパ、3分100円で、肩叩こうか?」

「いや、いいよ」

「じゃあ、靴磨いたら100円は?」

 10歳になった息子はこの所、何かに付けてお小遣いを欲しがるようになっていた。

「いったい何に使ってるんだ?」

 と、俺は妻に聞いた。

「私だって分からないわ」

「家庭の事は、任せてるからな!しっかり頼むよ」

 と、俺は妻に言った。
 ある日社長に呼び出された。社長は机の引き出しから封筒を出し渡した。

「中を見たまえ」

 開けると遊園地の、1日ファミリーパスポートが入っていた。

「これを持って、遊園地で接待してもらいたい!重要な相手のご家庭だから粗相のないように」

 社長じきじきの指示だった。
 そして当日。待ち合わせ場所に、黒塗りのリムジンがやってきた。接待相手が乗ってるだろう後ろのガラスは、スモークグラスで中は見えない。先に運転手が降りてきた。ドアを開けると社長が降り、続いて現れたのは息子と妻だった。

「なんでお前が!?」

 俺が妻に言うと……

「ある日、息子さんが会社に来た。そして言ったんだ。パパの一日を売って下さいって」

 と、社長はニコニコしながら俺に言った。

「ちょっと社長!?」

「と、言うわけで、今日は1日大切なクライアントに付き合ってもらいたい。キミの誠意を楽しみにしておるよ。そうそうあとで報告書もあるからな!どんな事して楽しんだのか?を報告するように!なので、ちゃんと楽しませろよ〜」

 と、言って社長は車に乗った。俺がポカンとしていると、スモークガラスが降りてきて……

「あっそうそう、働かせすぎて済まなかった。今日から3日、休暇を出すから、本当に家族と楽しんでくれ!」

 と、社長はニッコリして言ったのだった。

おしまい


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