短編29「よくありそうな昭和な話」
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〜方と、いう職業がある。今は、不適切という事で、ほとんど使われない言い方かと思う。
牛方、馬方という職業がある。昔話によく出てくる仕事だ。昔、牛や馬を屠殺し、その肉や骨、皮を加工した職業の人たち。血や油にまみれ、その仕事は重労働である。
土方という職業がある。その昔、開発工事に伴い、文字通り土を運んだり、穴を掘ったりする肉体労働者をそう呼んだ。土だけでなく、重油や、産業廃棄物にまみれ、身体を張り、命がけの現場も多い。今でも呼ぶが、正式ではない。
さてここからは、良くありがちな話を書こうかと思う。貧しさに気付くという話しだ。話しの進行は、「僕」で進むが、今回は実際の僕の話ではない。だから、これの話しはあくまで。例え話ぐらいで、読んで欲しいと思う……
◇◇◇
ずっと昔。子どもの頃、なぜ母はこんなに汚いのかと、思い悩んだ時期があった。そして悩みは、いつしか否定、無関心へとつながっていった。
「おら、さぼってねえで、とっとと働け!チンポも身体も、生きてるうちに使え!!」
母は、小汚く土と汗にまみれた、荒くれの男たちに、汚い言葉で言い放っていた。仕事で欠けた前歯……そして事故で短くなった小指。その何もかもが小学時代の僕にとって、そんな母の姿を見るのが、とにかく嫌で仕方なかった。
母は土方女だったからだ。
ある日、授業参観があった。僕は、学校からのお便りを、母に隠していた。そして参観日当日……
「お前んちの、母ちゃんがきてるぞ!」
僕は、ゾクッとした。どうやって知ったのか!?僕は、見たくないものを確かめるため、いやいや振り向いた。友達の、綺麗なお母さん達が沢山並ぶ中、一人みすぼらしい姿があった。
母だった。
それでも母の着ている服は、我が家では一番良い服だった。鼻がツーンとなった。胸が苦しくなった。僕は、なぜか悲しかった。その日の夜……
なぜ、来たんだ!?
汚い服で来るな!
と、母をなじった。
僕は貧乏とかは、どうでもよかった。なんと言えばよいのか……愚かさが出ている。あの、みすぼらしい感じが、涙が出るほど、たまらなく嫌だったのだ。
結局母が、授業参観に来たのは、あの一回だけだった。そして小学校の卒業式、中学、高校の卒業式と……来る事はなかった。
そうそう僕は、早く働きたかった。しかし大学は母の、たっての希望だった。僕は母の稼いだ金と、昼間働き夜間高校で学びながら大学に入った。
「土方の息子が大学〜!?」
時々会う、母の職場の仲間に言われた。
「早く働いて、母ちゃんを楽にしてやれ」
とも言われた。
僕は奨学金をもらい、大学を
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