第143話 異民族対策
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打ち破るなど不可能。必ず搦め手でくるだろう。搦め手は搦め手でも卑劣極まりない手であろうな」
「劉荊州牧は名士。その彼女が蔡徳珪の卑劣な行為を看過するでしょうか?」
「荊州掌握の過程で都合よく豪族が変死しているだろう。それを劉景升は調査したのか? 美羽の件は見てみぬ振りをしている。あの女は己の手を汚すことは嫌うが、周囲の者が己のために手を汚すことは気にはしないであろう」
「蔡徳珪の所業を知らないだけでは?」
「渚、劉景升を侮るな。あの女は有能な政治家だ。荊州の大郡である南陽郡太守襲撃の件は既に劉景升の耳に入っていることだろう。あの女は美羽に孫文台を討伐するため共闘を求める文を送ってきている。もし、あの女が美羽襲撃犯の黒幕が蔡徳珪と思っていないのであれば、美羽の元に見舞いの使者でも送ってくるだろう。友誼を深める機会をみすみす逃すなどするものか。劉景升は共闘の文を送ってきても見舞いの使者は送ってきないのだろう?」
渚は正宗の指摘に頷き得心した表情になった。
「劉荊州牧は美羽様の襲撃犯の黒幕が蔡徳珪と承知しているということですね。であればなおのこと見舞いの使者を送るべきでは」
「そこが劉景升ということだ。あの女は知恵は回るが用心深く即断即決できるほど肝は座っていない。事実を知っていれば余計に判断に迷うはず。見舞いの使者を送らぬということは、あの女の預かり知らぬところで蔡徳珪が動いたということだ。そうでなければ何らからの接触をしてくる。それがない以上、美羽の件は蔡徳珪の独断だ」
「わかりました。ですが、孫文台が死ななかった場合はどうなさるのです?」
「何もせん。その時は客将として飼い殺せばいい。不満であれば、孫仲謀から私の元を去るだろう。客将なのだからな」
渚は正宗の言葉に安堵している様子だった。
「渚、お前は私が孫仲謀を客将とし、その縁で子飼いの部将を孫家に貸す気でないかと憂慮していたのではないか?」
「正宗様、その通りです。私はわざわざ火中の栗を拾う必要はないと思っておりました。劉荊州牧と対立することになれば、美羽様のご意思にも反すると」
「客将にしたからといって孫家に人材を貸してやる理由にはなるまい。違うか?」
渚は正宗の意図が読めないという表情をしていた。
「孫仲謀には人材の支援は私の紐付きかつ条件付きで行うと伝えるつもりだ」
「条件付き?」
「条件は私の元で客将として実績を積み、信頼を得ることだ。この条件を飲まないなら孫家と関わることはないだろう。条件を飲まねば孫仲謀を体よく追い払える」
「孫文台は喜んで孫仲謀を正宗様の元に差し出しましょう」
渚は間髪入れずに答えた。
「そう思う理由は?」
正宗は渚の言葉に嬉しくない表情を浮かべた。正宗は内心孫仲謀が彼の提案を断るのを期待
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