第143話 異民族対策
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「美羽ならば私の話に共感してくれるであろう。麗羽も同様であろう」
「美羽様のことは存じませんが、麗羽様は山越の民に同情なされ、彼らの立場の向上に尽力することは惜しまないと思います」
先ほどまで静観していた桂花が正宗に言った。彼女は正宗の方針に賛成なのだろう。麗羽は現在確固たる地盤がない。このまま彼女が揚州に赴任すれば、在地勢力にいいようにされるのは目に見えていた。正宗の縁者と少なからずの縁がある山越の民は現在迫害され苦しい立場にある。正宗の威名を借り、山越の民への介入を測れば彼らの支持は得やすい。また、彼らは揚州の官吏であり正宗の妻である麗羽のために働くことは容易に推測できた。
「正宗様、太守たる者は他州はもとより他郡への干渉は差し控えねばなりません。美羽様に禁を犯せと仰るのですか?」
渚は美羽を関わらせたくないと思っているか、正宗に道理を説いてきた。
「私は美羽に禁を犯せとは一言も言っていない。揚州刺史となる麗羽の支援要請に応えて欲しいと言っているだけだ。在地豪族は不満を持とうと文句は言えまい。美羽と麗羽は同じ門閥。汝南袁氏同士が助けあうことに文句を言うということの意味を理解できない程に揚州豪族は馬鹿ではあるまい。それに」
正宗は一呼吸置き口を開く。
「私は麗羽と美羽の背後に私が居ることを露骨に揚州豪族に示すつもりでいる」
渚は正宗の言葉に表情を固まらせた。
「麗羽には揚州刺史だけなく異民族討伐を名目に『征東将軍』、美羽にも同様の理由で『征南将軍』に上奏する。勿論、この私が直接上奏はしない。上奏は司徒殿に頼む」
渚と桂花は沈黙した。正宗は異民族討伐を名分として在地豪族による異民族への介入を排除しろと言っているのだ。前線司令官である征東将軍、征南将軍の異民族への対応方針に異を唱えれば在地豪族と言えど首が飛ぶ。最悪、一族にまで累が及びかねない。朝廷は異民族を討伐しようと融和策で異民族を取り込もうと手段は気にしないだろう。所詮、中央とって辺境のことなどどうでもいいからだ。だが、在地豪族には強いプレッシャーとなる。上奏が三公で名士で名高き王允であれば尚更だ。これは正宗が王允へ貸しを創ることになるが、王允の望みは董卓を抑えること。朝廷への過度の干渉は危険だが、董卓に圧力を加え賈?を暴走させる程度の干渉は正宗の利に叶う。董卓の件は王允から話を持ちかけてきた以上、彼女は正宗の要求をある程度聞かざる負えない。異民族討伐のための官職要求であれば潔癖症の王允の性格からも是認しやすいと正宗は考えたのだろう。
「わかりました」
渚は正宗の言葉に肯定の返事をした。麗羽に『征東将軍』の官職を与えるということは、揚州への積極的な干渉はしなくてもいいと思ったのだろう。しかし、美羽に『征南将軍』の官職を与
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