短編19「パパもうすぐ死んじゃうの?」
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「パパ、もうすぐ死んじゃうんだよね?」
5歳になる息子に聞かれた。
「そうだね。でも、まだ少しはいられるよ」
と、僕は返した。
僕と息子は今、車の運転に夢中だった。 夜、河原の駐車場に行き、息子と運転を楽しんでいる。
「じゃあ、ハンドルを持って。パパがアクセルを踏むからね」
息子を膝にのせ、ハンドルを任せた。
「出発〜!」
と、息子が言うのに合わせ僕は、軽くアクセルを踏んだ。 誰も車を停めていない駐車場を、ゆっくりゆっくりと車を走らせていく。
息子は、ハンドルの横から出ている棒を動かしては、ウィンカーやライトを点けて楽しんでいた。
「ちょっと、何してんの?」
自転車に乗った警察官が、こっちにやって来た。息子を膝に載せたまま、僕は正直に答えた。
「済みません。息子と運転を楽しんでました」
「一応、免許証見せてくれる?」
警察官はしばらく免許証を見たあと、僕に返した。
「お子さんを乗せたままの運転は危ないし、駐車場にいつ他の車が来るかも分からないから、今日で止めて下さいね」
そういうと警察官は 行ってしまった。僕らは少し、ショボンな気持ちになりながら、家に帰る事にした。
それからしばらくした、ある日の事だった。
ピンポーン
と、玄関のチャイムが鳴った。
「警察の者ですが」
ドアを開けると、この間の警察官がいた。
「ここに行ってみて下さい。ここなら好きに車を走らせて大丈夫ですよ」
と、一枚の地図を渡された。
「どうしてこれを?」
「いえ……その後、息子さんが派出所に来られまして。そして、ご病気か何かで余命がわずかとお聞きしまして、まことに勝手な事かと思いましたが、少しでもお役に立ちたいと思った次第なのです」
僕は、警察官の言葉に、目頭が熱くなった。
「ここは?」
「ああ、大丈夫ですよ。実は私の実家でして、昔は従業員を抱えてショベルカーなどの重機屋をやっていたんですよ。今では、ただの跡地です。私の父は、そこの敷地内に住んでいます。失礼ですがナンバーを控えさせていただきました。父の方には伝えてありますから大丈夫です」
「そうでしたか……」
僕は深々と、警察官に頭を下げた 。
その夜、僕は息子とその場所に行った。広い砂利の空き地の端に、プレハブの事務所らしき建物があった。電気が点いていたので、一応挨拶した。
「ああ、息子から聞きましたよ。どうぞお使い下さい」
中から出て来て来た、人の良さそうな初老の老人がそう言った。こうして僕らは、また車の運転を楽しんだのだった。
◇◇◇
「パパ、もうすぐ死んじゃうんだよね?」
5歳に
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