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我が剣は愛する者の為に
覚悟
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ら歩いて行く。
街の人は北郷を奇妙な目で見ていくがもう気にしていないようだ。
すると、北郷は路地の入口で足を止める。

「此処から先には何がある?」

「おそらく貧民街だろうな。
 こういう街は大通りは賑やかだが、少し外れると貧しい暮らしをしている家族などが集まっている。」

その説明を聞いて北郷は躊躇いもなく足を踏み入れる。
俺はその後を追う。
大通りの街並みと比べるとそこはまさにボロボロだった。
並んでいる家などはボロボロで壁などに穴が空いている。
冬場は冷たい風が中に入ってくるだろう。
暮らしている人から生気が全く感じられなかった。
その時、俺の後ろから誰かがぶつかる。
それは子供だった。
見た目は五〜六歳程度の男の子だ。
俺はその子供の腕を掴む。

「何するんだよ!!」

「財布、盗んだろ。
 返せ。」

この子供は俺にぶつかった時に財布を盗んだのだ。
子供は俺の腰にある刀を見て、素直に財布を返す。

「どうして、財布を盗んだんだ?」

気になったのか北郷が子供に聞く。

「母ちゃんが病気で父ちゃんは家にいなくて。
 母ちゃんが苦しそうだから、俺が何とかしなくちゃって。」

最後の方には泣きそうな顔になりながら言う。
俺は財布からお金を取り出し、子供に渡す。

「これで助かるかは分からないが持っていけ。
 もうこんな事はするなよ。」

「あ、ありがとう、お兄ちゃん!」

お金を大事そうに握り締めて自分の家に戻る。

「こういうのが他の街でも?」

子供を目で追いながら北郷は言う。

「全部が全部という訳ではないが、土地を統治する人間が駄目な場合はこれが多い。」

「そうか。」

しばらく街を歩いて、日が暮れてくると宿に戻った。
六日目になった。
さすがに剣を振っておかないと思った俺は北郷の部屋に尋ねる。
北郷は部屋の椅子に座っていた。

「これから裏で剣の修行をする。
 街に出るのなら教えてくれ。」

「いや、もう街には行かないよ。
 それより、修行見せて貰ってもいいか?」

「構わない。」

俺がそう言うと北郷は着いてくる。
少し拓けたところで周りを確認して、俺は刀を抜く。
やる事は単純。
まずは素振りと氣の基本的な修行。
部分強化などしながら調子を確かめる。
最後の方は自分自身を敵としてイメージして一対一の勝負をする。
ある程度修行を終えた時、ずっと俺の修行を見ていた北郷が話しかける。

「関忠はどうして修行するんだ?」

俺は自分の覚悟を北郷に言う。

「王になるためだ。」

「王に?」

「ああ。
 さっきの貧民街を見ただろ。
 ああいう貧しい人がどんどん増え、賊も増えている。
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