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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
六十二 〜異変〜
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れませんねー」
「どういう事だ、程立?」
「いえいえ、簡単な事ですよ。風も稟ちゃんも、お兄さんとは身も心も通じ合っていますからね」
「み、身も心も、って……」
 みるみるうちに、馬超の顔が真っ赤に染まりだした。
「何だ、翠? 顔が赤いぞ?」
「ううう、うるさいぞ母様!」
「何を想像したんだ? 土方と、郭嘉や程立が褥を共にしてる姿か?」
「★■※@▼●∀っ!?」
「おおー、流石は母親さんですねー。大胆なのですよ」
「だって事実だろ? だいたいな、この娘は初心過ぎるのさ。もう恋愛の一つや二つ、してもいい年頃なのにな」
「かかか、関係ないだろ! そんなの、あたしの勝手だ!」
「なんなら、土方に女にして貰ったらどうだ? 決して悪い相手ではないと思うぞ?」
 親が子をからかう図と言うのも……どうなのだ?
「こ、このエロエロ魔神! あ、あたしは先に帰るからなっ!」
 馬超は、肩を怒らせて出て行った。
「……馬騰。言うに事欠いて、私を引き合いに出す事はあるまい?」
「いや〜、悪い悪い。あの通り武以外はからっきしなんでな、恋愛沙汰になるとまるで奥手で。アイツの従姉妹の方がずっとマシさ」
 悪いと言いながら、全く悪びれた様子がない。
 従姉妹……馬岱の事であろうが、やはり似た性格なのであろうか?
「では、行って参る。風、済まぬが留守を頼んだぞ?」
「御意ですよー」
「じゃ、あたしも帰るか。土方、くれぐれも気をつけてな」
「うむ」

 鈴々を伴い、宿舎を出た。
「お兄ちゃん、怪しい奴の気配はしないのだ」
「そのようだな」
 疾風と星の働きで、少なくとも見張りの目はなくなったようだ。
「だが、油断は禁物だ。鈴々、頼むぞ」
「応なのだ!」
 新月のせいで、外一面、闇夜である。
 目立つのは承知の上で、兵が松明に火をともす。
「では参るぞ」
「はっ!」
 麗羽の宿舎までは、日中であれば指呼の距離。
 だが、これだけの闇夜の上、洛陽の治安は正直、心許ない。
 月の為にも、不覚を取る訳にはいかぬ。
 数名の兵に囲まれながら、粛々と歩みを進めた。
「…………」
「鈴々。些か、気負い過ぎではないのか?」
「そんな事はないのだ。……お兄ちゃんに何かあったら、鈴々も愛紗も悲しいのだ」
「愛紗が如何致した?」
「お兄ちゃん、今日危ない目に遭ったと知らせがあった時、愛紗はとっても心配していたのだ」
「……そうか」
「勿論、星も疾風も稟も風も、愛里(徐庶)や彩(張コウ)だってそうなのだ。だから、お兄ちゃんには指一本触れさせないのだ」
 松明の朧気な灯りの中、鈴々が表情を引き締めた。
 打算も何もない、純粋に私を気遣っての言葉だった。
「わかった。だが、やはり気負い過ぎだ。気を張り詰め過ぎでは、いざという時に
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