生死乱れる紅の狂宴
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んな地獄の中でも彼女を見つめ続ける狂信者達が、恐ろしかった。
ひっ、と小さな悲鳴を上げて目を逸らしていた斗詩は、麗羽の言葉を受けて唇を噛みしめ、腰が抜けそうになりながら明を見た。
「……はい」
「それに本番はまだですのよ。“ふぁらりすの雄牛”も、黒麒麟の考えた狂宴もまだ為されていない」
「っ! です、ね……元袁家の兵士は同族殺しで精兵に鍛え上げられましたけど、張コウ隊だけは……」
此処に来るまでに抵抗は受けた。
何故同じ地を守るモノ同士で殺しあわねばならぬ……そんな戯言を述べるモノ達を殲滅し、蹂躙してこの南皮まで進軍して来たのだ。
兵士達は線引きを越えた。裏切り者でありながら曹操軍としての自覚を持ち、心も身体も鍛え上げられた。
だが、狂気の張コウ隊だけは別。あまりに減り過ぎたから、此処で大きな基盤を作り上げておくことにしていた。
「あっれー? もう諦めちゃったんだ。つまんなーい」
夕暮れ時に遊ぶ子供のように、明は頬を膨らませてぶぅたれる。
イカレた紅揚羽が見せる子供らしさは、血と臓物に囲まれて妖艶さが際立っていた。
「じゃあそろそろアレやるかね……ひひっ、教えてくれてあんがと秋兄♪」
一人ごちて、彼女は一つの器具の前へと歩みを進めた。
それを教えたのは彼だった。絶望の快楽を喰らう紅揚羽に、現代の知識を与えてしまった。
それは雄牛だった。金属で出来た雄牛。腹のところに人一人が入れるように作られたモノ。
「はーい♪ みなさん、よぉく聞いてねー? これから十人くらいこの牛さんの中に入って遊んでもらいまーす♪ 大丈夫! 中には痛いモノは何も無いかんねー♪」
言われた者達は首を傾げる。先ほどまで行われていた直接的な処刑手段では無く、訳が分からないモノだったから。
彼らは、それがどれだけ残虐な処刑道具であるのか知らないのだ。
明は鼻歌を口ずさみながら、牛の下の木材に火をつけた。
それを見て、誰もが息を呑んだ。どうなるかなど直ぐに予測出来る。
「ひひっ……じゃあ押し込んじゃおう♪」
「張コウ、貴様――――へぶっ」
「うっさいなぁ……黙って入れよゴミクズ」
「やめよ……やめるのだ張コウ! わしは死にとうないっ!」
「残念、あんたももう終わりー」
鼻っ面を殴りつけて、縄で巻かれたまま身をくねらせて暴れる老人を牛の中に入れた。
短剣で縄を切り……そうして扉を閉めるだけ。
――どうなるのかな? 面白いかな? 無様かな? 楽しいカナー?
はやくはやくと身を揺らして、彼女はにやにやと雄牛の前で思考に潜る。
じりじりと照りつける熱が強くなっていく。中から金属を叩く音が何度も響いていた。
老人は真っ暗闇の中で恐怖に包まれていた。
周り
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