生死乱れる紅の狂宴
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張コウ隊は明の狂気を真っ直ぐに見ていた。それだけが、彼女を慰める方法であると知っていた為に。
そんな中でひときわ目立つ男達が居る。
真っ青に顔の色を抜け落ちさせて恐怖に震え、目の前で行われる地獄に怯えているだけの男達。
彼らは新しく徴兵された新兵。紅揚羽の部隊に配属が決まったことこそ運の尽き。地獄の第一歩を踏み出すには、彼女そのモノを受け入れるしかない。
既存の張コウ隊でさえ耐えきれずに恐れ慄いているというのに、人を殺したことも無い兵達が耐えられるわけがない。
しかし、逃げる奴は殺せ……と明は張コウ隊に命じてあった。だから逃げられない。選んだからには、明も逃がさない。
「次は……皮を剥ごう♪ 何処がいい? 脚? 手? 腕? 腹? それともぉ……やっぱり顔だよねー♪ あははハハはっ!」
赤い赤い血を浴びて、紅揚羽がまた笑う。
戦場とは違う狂気の宴は、この世のモノとは思えなかった。
臓物が飛び散った。
飽きたおもちゃを壊すように、皮を剥いでいた男の腹に手を突っ込み、中からぐちゃぐちゃと臓物をはぎ取って行く。
新兵は涙さえ流していた。こんなモノが武将であっていいはずが無い。こんなモノになど従える方がおかしい……と。
だが、彼らは分からない。
自分達が安全な場所に居る其処で綺麗事を考えているのは……戦場という理不尽では有り得ないのだと。
ふと、明が新兵達に顔を向ける。
「やってみる?」
「っ! い、いいえ、自分には出来ません!」
「ふーん……つまんないの」
言いながら湯気の立ち上る臓物を投げ捨てた。
次は頭蓋を砕き割り、脳漿を取り出して他の一人の口に突っ込んだ。吐き出しても吐き出しても、無理やりに突っ込み続けて行き……舌を掴んで引き抜き、また嗤う。
鎌を投げて、無作為に命を屠ったり、踏みつけるだけ踏みつけて手足を引き千切り椅子にしたり、くり抜いた頭蓋を脳漿と血で満たしてそれを飲ませたり……縦横無尽に動く狂人は誰にも止められない。
生贄に捧げられる袁の人間たちは、次第に諦観だけに支配されていく。どう足掻いても、その狂人に殺されるしかないのだと。
先ほどまでは元気であったのに、彼らから声が抜け落ちる。
拷問されるモノ以外は自己の死に怯え、ただ震えるだけの家畜同然。
「……目を逸らしてはなりませんわ、斗詩さん。これは一歩間違えばわたくし達にも向けられる狂気。張コウさんだけが特別ではなく、憎しみに染まったモノなら誰だってこうなる可能性を秘めています。ただ、わたくし達だけは“アレ”と彼らのようになってはなりません」
高台で見下ろす麗羽は、その残虐な行いを震えながら目に留める。
人の憎しみはかくも恐ろしい。人の考え付く理不尽は怖くて仕方ない。そして……こ
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