生死乱れる紅の狂宴
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してくれたことだろう。
誇らしいと胸を張って褒めてくれたかもしれない。頑張れと背中を圧してくれたかもしれない。
けれども向けられるのは怯えと憎しみと恐怖だけ。
寂しいが……不安は無い。
友が居て、仲間が居て、同志が居て、愛する民と、心に残る想いがある。
何も無かった紅揚羽と違い、麗羽は壊れないで済む。
「やめて、やめてぇ! どうしてよ! 殺すことなんてないでしょう!?」
「お前は人だろう!? 親殺しなどやめておけ、な?」
耳をふさぎたくなった。
心の底から笑えて来た。
こんなモノに従っていたのかと、こんなモノに怯えていたのかと、こんなモノに誰かが苦しめられ続けていたのかと。
麗羽の心が変わらないと見て、二人は憎しみをあらんばかり瞳に込めた。
泣き叫べばいいのに、悔いてくれたら良かったのにと麗羽は思う。それなら少しは救われた気がしたから。
きっとこの後に言われる事は決まっている。だから、麗羽は哀しかった。
「どうして……こんなことになるのなら……あなたなんか生まなければ良かった!」
「お前など生まれなければ良かったのだ! そうすれば俺達は――――」
ただ空虚な穴が少しだけ胸に空く。
眉を寄せて、麗羽は微笑みを崩さない。
「それでもわたくしはこう言います。生んでくださってありがとう、と。そして……」
「いやぁ! 死にたくない、死にたくない! たすけて、お願いよ、助けてぇ!」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 誰か助けてくれ! 俺はまだ死にたくないぃ!」
振り上げた白刃が輝いていた。
言葉すら聞いて貰えないが……どうしても麗羽は伝えたくて、ある言葉を二人に贈る。
「……袁紹としての麗羽は、確かにあなた方を……“愛していましたわ”」
肉を裂く音が部屋に一つ。
刎ねられた母の首から血霧が吹き出し、麗羽の身を染めて行く。
自身に流れるモノと同じ血で赤く赤く染まった彼女は、妖艶な笑みを浮かべた。
絶句して声も出ず震えつづけている父を見下ろして、麗羽は剣を突き付けた。
「……わたくしは民の為の王、袁麗羽。旧き袁家を滅ぼした最後の袁にして、新しき袁家の当主である。
この身この命この魂、全てを平穏の為に捧げんことを此処に誓いましょう。
そして……ずっとずっと先の未来で、長きに渡る贖罪の時が終わり、わたくしの作る家が誰かから愛されますように……」
謳う言の葉は覚悟を込めて。
旧き自分への決別と、未来に繋がる子供達に明るい未来を作る為。
「お父様……地獄の底でお会いしましょう。
袁家最大の敵であるあの方の代わりに、わたくしが引導を渡して差し上げます」
最後に彼女は……想いを繋ぐ言葉を借り受けた。
今の世界を変える
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