生死乱れる紅の狂宴
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変えていく。本当に……不思議な人達。
ただ、平穏の為の供物のような在り方に憧れるモノなど居ないはずなのに、それを追い掛けてしまうモノは確かに居たのだ。
忠義とは違う子供のような憧憬で、英雄の生き様と誇りに魅了されて命を散らす。
麗羽には分からないのだ。
バカ共の男の意地など、分からない。生かされるくらいなら戦って死ぬ。引くくらいなら突撃して死ぬ。逃げるくらいなら誰かを守って死ぬ。
生きて掴む幸せよりも、彼らは世界を変えたいのだ。
その想いを諦観など出来るわけも無く、諦観に塗れた生になど価値は無い。
そういう自分達に惚れてくれた妻を持ち、そんなバカを支えてくれる友を持ち、そんな自分を送り出してくれる親を持ち、彼らは大バカ者の頂に辿り着いた。
黒麒麟の狂信はそうして広がり……覇王と同じ高みにある。
ふっと苦笑を漏らす。
麗羽は分からずとも、そんな異質なモノだからこそあの曹孟徳と並び立てるのだと思えたから。
「夕さんもわたくしも間違いでした。王の力とは、すなわち末端に至るまでの人。
恐怖と利で縛ろうとも、率いる人の心を魅了せずして王には成り得ません。非道悪辣は効率的ではあっても、いつしか袁家は滅亡したでしょう。管理されるだけの社会に人は耐えられない。それは夕さんと張コウさんを絶望に落とし続けたあなた方が一番分かっているのではなくて?」
綻びは小さく、されども大きく育ち行く。
今が幸せならそれでいい……自分達が幸せならそれでいい……その自己満足の想念に、人は反発を殺せず、同じ欲持つモノに駆逐されていくだけであろう。
自分の愚かしさと、己が王佐や袁家の原罪を鑑みて、麗羽は震える。
「作りたい平穏が“ついで”だというのなら、その程度の想いこそ命を賭して戦っているモノ達への侮辱に等しい。誰がそのようなモノに付き従えましょうや!
子を、孫を……先へ先へと繋いで行く人の命を……ずっと平穏と安寧を繋いで行くことこそ血族の絆たる所以では無いのですか!
血族だけで繁栄が為し得られるわけが無い。血肉たる税を治めてくれる民と、傷だらけになりながら戦う彼ら兵士が居るから血族による平穏は作り出せた。本物の王とはそれを理解した上で戦ってこそ。二人は血では無く才を以ってそれを成し遂げるというのです……ふふ、中々どうして、面白いじゃありませんか」
覇気を纏い、麗羽は不敵に笑う。
自分よりも上手く治められるモノが居るなら従い任せる。華琳にとっての敗北とはそういうモノ。
元より黒麒麟は、覇王が自分よりも上手く世界を回せると知っているのだからさもありなん。
麗羽から向けられた威圧に、男も女も震えあがった。
「全ての民に機会を……甘美な響きでしょう? 保身を願うあなた方にとっては恐怖以外
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