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乱世の確率事象改変
生死乱れる紅の狂宴
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麒麟を得たことでもはや止まることを許されない。
 黒麒麟の加入と今回の件でより大きく善悪の別が曖昧になったこの勢力は、他人に判断を任せる華琳の在り方そのものを表していると言えよう。
 殴られるかもしれない、殴られるのだろう、それなら殴ってしまえ……怯えと警戒は乱世を伸ばし、人の信を殺す毒だ。
 故に華琳は、殴って殴って、殴り抜いて……腹の中に刃を隠し持っているなら事前に叩き折り、反抗を示すなら無理矢理に従え、そうして下ったモノを慈しむ。

 そして華琳と共に儒への反逆を示した彼は……黒麒麟の価値をぼかし尽くし、皆が期待する英雄では無く覇王の作る世界の為の英雄と化し、自分を殺してもいい理由を作った。
 黒き大徳に妄信は必要ない。皆が自分で考え、自分で決めて、人々がそれぞれ自分自身にだけ従えばいい。
 桃香とは違う冷たいやり方で、彼は人々に抗う力を付けて行く。

 覇王の道と黒き大徳の矛盾螺旋。二人以外は自由で、二人だけは平穏の有無に縛られる。
 華琳が間違えば秋斗が剣を向け、秋斗が裏切れば覇王が断罪する……互いに孤独で、互いしか理解者が居ない。

 此処最近その事を見抜いた麗羽はあの二人に従うことに迷いは無い。

「自分が幸せになりたい……それは人として当然のことなのでしょう。しかし自己の欲を優先するなど民に平穏を齎す為政者としては落第にも程があります。“ついでに世に平穏を齎そう”などと……その程度の想いでこの大陸の王になれるなど甘い認識にも程があります。
 故にあの二人は暴君に非ず、世の為に戦う英雄として人が集まり、慕われ……“従う皆から幸せを願われる”。どれだけ親しいモノを失おうとも、どれだけ共に戦った戦友達を失おうとも、その屍を乗り越えて高みを目指すから、彼らはこの乱世で人を惹きつけて止まない。
 ただ幸せに生きたいだけのわたくし達では、到底届くはずもありませんことよ」

 言いながら、自分も袁の王佐も間違いであったと思う。
 人として幸せになりたいと思うのはいい。それでも、人の頂点である王として立つのなら、そのモノは世の為にあってしかるべき。

 “もしも世界か大切な誰かを選ぶしかなくなったのなら、世の平穏の為にその大事なナニカを切り捨てる”
 “もしも自分が死ぬ事で世に平穏を齎せるのなら、喜んでこのちっぽけな命を捧げよう”

――あの二人が辿る道は冷たく、救いは無い。人々の代わりにナニカを捨てるから、敬意を持たれても追い掛けられず高みに昇る。

 極論だが、麗羽は二人の持つ覚悟の大きさを正しく見抜く。
 彼らに我欲は無く、それでこそ人々を魅了し、平穏の為の生贄として身を窶すのだ、と。

――しかし黒麒麟だけは……別。その背中を追い掛けるモノ達は狂信者。同じモノを増やして増やして、そうして世界を
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