生死乱れる紅の狂宴
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は全て鉄。下から込み上げる熱が徐々に強くなるのが分かった。
「ひぃ……ひぃぃぃぃっ」
どうにか逃げようと壁を叩くも逃げられない。
せめて熱から逃げようと……来ている衣服を下に敷く。それくらいしか抵抗出来ないのだ。
限定された空間での熱気が強くなり、息がどんどん苦しくなっていく。
喉が焼ける。口の中が乾いて仕方ない。息をすることでさえ、喉を焼き付けて行く。
「かひゅ、ひゅー、だ、だし……て……」
もがき苦しみ、暴れるしか出来ない。
そこでふと、老人の手に違うモノが当たった。
前の部分に、ナニカがあった。分からなかったが、ソレだけ少し冷たかった。
だからだろう……老人は本能のままに縋り付き、空洞になっている事に気付く。
新鮮な空気を求めて、ソレを引っ張った。少しだけ伸びて、口元に持って行くことが出来た。
汗が止まらない。喉が焼ける。何よりも求めたのは空気だった。それだけだった。
必死で吸う。吸う。吸う。吸う。
生温い空気であれど、漸く呼吸が出来たのだ。
だが、逃げることは出来ない。だから、ソレだけに縋りつくしかなかった。
また吸う為に、大きく……息を吐き出した。
瞬間、雄牛が雄叫びを上げた。
屠殺場に連れて行かれる牛が上げる最後の断末魔のような、そんな声を。
何度も、何度も……牛は声を上げた。
まるで生きているかのように思えるその鉄の牛は、中で暴れる老人に呼応してがたがたと震えつづけ、叫んだ。
「あは……いいじゃん、いいじゃんこれぇ♪」
外で見ている明は、その必死な雄牛の様子にただ満足だった。
生に縋りつく様が人のモノでは無いのだ。
家畜と同じ声を上げて死んでいくのだ。
それでも生きようと声を上げ続けるのだ。
命の輝きが煌く瞬間でありながら、無様さに対する愉悦を存分に感じられる。
中の様子が見れないのは残念だったが、彼女はコレが気に入った。
何度も上げる断末魔の叫びが、幾分たった頃に小さくなっていく。
同じく、暴れていた牛は動きを止めた。
分厚い布で取っ手を掴み、明はにやけたままで蓋を……開けた。
明にとっては嗅ぎなれた匂いが場に充満していく。
そこかしこで嘔吐する者が続出していった。人の肉が燃える異臭にやられ、麗羽と斗詩でさええづき、吐いた。
焼け爛れた皮膚が痛々しい。虚ろな瞳は何も映していない。現れた死体は、密室にて茹で上がり異常な肌色を為している。
視界に入れただけで吐き気を催す程のソレを、明は丁寧に切り刻んで行く。
「うん! こんがり焼けました! あんたらはこれから大事なことするし精をつけなきゃダメだからさー、コレを食べて貰おっかナー。断った奴は……牛さんに入ってね♪」
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