第22話 Machination 1
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に謝るのは何度目だろう。その度に俺は、この人に迷惑をかけてる。
すると、サテライザー先輩はスクッと立ち上がり、出口へと向かっていく。
さすがに愛想を尽かされてしまったのだろうか。そう思っていると……
「す、素敵な初部屋入りだったわ。」
その言葉で俺は俯いてた顔を上げる。その声は優しく、俺に染み渡る。
「一晩中一緒に入られたんだもの。」
頬を赤らめ、俺にそう言う彼女はやはり、とても美しかった。
ガラッと医務室の扉を開け、サテライザー先輩は去っていった。
ああ、ダメだ。本当にあの人はずるい。
これでは、これ以上謝れないではないか。
「ん?なんだこれ……」
ふと、ベット脇のタンスを見ると、花瓶に挿された花の隣にリンゴが一つ置かれていた。まるでイングリット先輩の髪の色のように、赤く熟したリンゴだ。
そして、そのリンゴの下には一枚の書き置きがあった。丁寧な字で、なんと日本語で書かれていた。日本人など、この学園で数えるほどしか見ていない。
『アオイ・カズト様。
またしても重症を負ったと聞いたので、見舞いと先日の謝罪をしに足を運んだのですが、意識がお戻りになっていないようだったので、一筆書かせていただきました。』
……ここまで読むと、なんだか日本語を少し違う感じで理解しているようだ。文体が固すぎるよ……
とりあえず続きを読む。
『起こしてからお話をしようかとも思ったのですが、一体なにを話せば良いのかと思い、今回は見送らせていただきました。またの機会をお祈りさせていただきます。』
なんの面接結果だよ??やめてくれ、なんだかリアルだから??
落ち着け……続き続き。
『そこで、ここに見舞いの品だけを置かせていただきます。またお会いできる機会があったら幸いです。
イングリット・バーンシュタインより』
……イングリット先輩かよ??
まったく……礼儀正しいのかそうじゃないのか……だが、ご厚意はありがたく受け取っておこう。
俺は、この身に自分でつけた傷を癒すため、一つ置かれたリンゴを呑気に頬張った。
これから起こる騒動のタネが、自分であることなど、全く思わずに……
****************
その後のサテライザーは、珍しく朝から授業に初めから出ていた。
きっと、部屋にいたら昨夜のことが思い出されてしまうからだろう。
一晩中一緒にいた。男と同じ場所にいるだけでも嫌なのに、一晩中、彼のそばにいたのだ。
「はぁ…………………」
短くため息をつき、雑念を振り払う。
いや、そんなことで振り払えるのだったら、こんなに苦労はしていないのだが……
「ええ〜、それでは、今日は転校生を紹介します。」
不意に響いた担任の声に、意識を現実へと引き戻す。
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