第4話Aパート『見知らぬ、天井』
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
第三新東京市で金貸し業を営んでいるのは、大手銀行を除けば、この伊織金融商会ただ一社だという。
大手銀行も貸付は、担保を前提とした長期ローンか上限が数十万のキャッシングのみ。即日で300万を用意できるようなものは他にはない。
なぜこんな状況になっているのかといえば、治安向上を目的とした市の条例で貸金業者に対して厳しい審査が設けられているから。実質的にはこの都市の経済を牛耳る“魔殺商会グループ”以外を排除するように仕向けられていた。
政治と企業の、癒着。政治腐敗か。ともかくさっきの病院もこの金融会社もそのグループ傘下ということになる。
「こーなったら、ネルフに泣きつくのですよーっ」
ウィル子が涙目で叫ぶ。
…そうか成程、その手があったか。
「行こう」
ネルフにではなく。金融会社のガラス扉を開く。「え、えー!?」とウィル子は信じられないという表情だが。
「…客か?」
モップを持って、床を掃除していたらしい若い男が振り返り言った。ノーネクタイで黒いシャツに黒スーツ、銀縁メガネをかけた耽美な顔立ち。愛想笑いのつもりか、ニヤリという悪い笑みになっている。客を迎える態度とは思えないが。
「先に言っておくが、人命より重いものはいくらでもある。金がその最たるものだ。」
先が赤く染まったモップをバケツに放り込んで、言った。
「…ご利用は計画的に」
「くくっ。返すあても無いなら借りるな。取り立てるこちらの身にもなれ。そういうことだ」
当然、担保も何もない。ウィル子はおろおろしているが。
「ところで、…あなたは?」
胸ポケットから取り出した名刺を差し出される。名刺には、『伊織魔殺商会社長 兼 魔殺商会グループ代表 伊織高瀬』とあり。
いきなり大物が出てきた。せいぜい、この金融会社の支店長クラスだろうかと思っていたのだが。
ともかく、これは好都合だ。
「僕に。投資しませんか」
「…何?投資だと。貸付ではなく?」
社長だという、この男――高瀬も意外だったようで、ひとまず話を聞こうという態度になる。まあ座れと勧められ、応接用机を挟んでソファに座る。
「先日、この都市を襲った脅威。それは“使徒”と呼ばれています。その使徒を撃退したのは、国連の下部組織」
「ネルフだろう。ふん、その位のことは知っている。その時ネルフの兵器――エヴァンゲリオン、に乗っていたのが貴様だ。と言うのだろう?川村、ヒデオ」
さすがに情報に聡いようで、こちらの素性はすでに割れていた。
「そう。知っているなら、話は早い」
「何に使うのかは知らんが、金が必要ならネルフに出してもらえ。0が7〜8個並ぶ程度の金額なら即座に用意できるだろう?」
どうやら
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ