暁 〜小説投稿サイト〜
IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-29
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
人の視線はモニターに向いている。見ればもう数十秒もすれば福音に接敵(エンゲージ)する。千冬は杞憂であってほしいと切に願う。――――そんな最中であった。


「織斑先生っ!」


 一夏を目の前で傷つけてしまったショックから立ち直った箒がセシリアたち四人を連れてブリーフィングルームにまでやってきたのは。
 厄介な種が増えたことに嘆息しながら追い返そうと彼女たちの方に視線を向ける千冬。


「部屋で待機と言って――――「一夏がっ、福音のもとへっ!!」


 千冬の言葉に被せるように箒が言う。言われたことを理解するのに千冬は数瞬を要した。そして自分の弟の命が危ないことに思い至るとすぐさま行動に移す。


 真耶は思考を制止させることなく、むしろもっと回転速度を上げた。千冬が言葉にするより先にモニターに専用機持ち全員の居場所がわかるように映した。映し出されたモニターを六人はくいるように見つめる。
 箒、セシリア、シャルロット、千冬は今の一夏の現在地を。鈴とラウラは蓮と束の現在地を真っ先に確認した。そして全員がほぼ同時に目標までの距離を割り出す。思ったより時間はなかったようだ。


 真耶は一夏に連絡を取ろうと試みるが一向に応答はない。通信自体を切っているのか、それとも単に気づいていないだけなのかは分からないが、時間がないことだけは理解していた。必死に連絡を取り続けるがやはり応答はない。ならばと次は蓮と束のもとへ連絡を取る。


『――――何? こんなことに意識を割いている暇なんてないんだけど、早く言って』


 応答したのは束だった。聞く人誰もが身震いしてしまうほどの底冷えした声色で空中に映し出されている筈のモニターに目もくれずに福音から放たれた高密度の弾幕を紙一重で回避していく。その向こうでは何か黒い線がジグザグな軌道を描いて福音に接近していた。それが蓮であることはすぐに分かった。


 真耶が怯えながらも一夏が戦闘区域に飛んで行ってしまった旨を伝える。その間、誰も涙目の真耶をフォローしてあげようと考える者はおらず、モニターに視線が釘付けであった。ただ箒だけは見たことの無い姉の姿に驚きが勝っていて、ぱくぱくと鯉の口のように動かすだけ。
 真耶から一夏接近について知らされた束は、撒き散らされたエネルギー状の弾幕の射程距離から離れると機体を止めて僅かに顔をしかめ、何かを考え始める。
 相変わらず真耶は怯えていて、手が震える始末である。


『……ちっ。分かったよ、もしあいつが来ても命は保証するからもう連絡してこないで』


 ぶつっと一方的に打ち切った束。震える真耶を横目にモニターから目を離さない千冬。その後ろで流れる映像をただぼんやりと見つめて何かを考えるのは鈴音。ラウラは何かそわそわしていて
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ