第30話 会話が切られるきっかけって大体がクシャミ
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「‥‥‥‥‥‥‥‥うぅ」
俺は寒気を感じて、ようやく目を覚ました。
頭痛がして、とても気分が悪かった。
周りを見ると、全員は各々楽なのであろう体勢で休んでいた。
「あ、起きたよ!」
マリーは俺の方に駆け寄りながら言った。
他の全員も俺の方を見ている。
「そうか、それなら良かった」
迅は一息つくとそう言った。
よく見ると、シートで作ったような
簡易的なテントのようなモノの中にいた。
「ん?そうやって作ったんだって言いたげな顔だな。
俺達が持ち合わせていたシートを全部繋げて、雨を完全に防いでいる。
柱は枝を凍らせて補強したものを、四隅もそれで固定している。
山のど真ん中に作ったものだが、土砂崩れでもない限り危険はない」
成程、それでさっきから寒かったのか。
地面にもシートを敷いたことで濡れないようにしている。
天井のシートの隙間も凍らせることにって解決している。
寒いという点を除けば、これは最善の策だろう。
リオさんの"超技術″はなかなか便利なものだった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
毛布も多めにかけられていて、とても暖かい。
誰の物かは分からないが、後で返すべきだろう。
このままだと、持ち主が寝ることが出来ないからだ。
だが、それよりも‥‥‥‥‥
「誰もあの時の事を問わないのか、って顔だな」
アスラは俺の心を読んだかのような事を言った。
そして、それは見事に御明察である。
俺は軽くうなずいた。気分は優れないが、このくらいは出来る。
「‥‥‥別に訊く気はねぇよ」
「なっ‥‥‥‥!?」
その言葉に俺は驚かされた。よく覚えてはいないが
おそらく相当な取り乱し方をしていたはずの
普段の俺からは想像もできない姿を見て
その原因を問う気がないだって?
あまりにも意外な事だった。
「誰にだって言いたくない事の一つや二つあって当然さ。
それを無理矢理言わせるのは、可哀想だからな。
お前の方から言いたくなるのを待つことにしたのさ」
今まで恐れていた。このことをいつか問われる事を。
「それに、これはオレ達全員の言葉だ」
だが、彼らは決して俺に無理をさせなかった。
彼らにとって、俺はすでに仲間だったのだ。
仲間に無理はさせない。それが全員の優しさだった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥ッッ‥‥‥」
目から涙が溢れそうになったので、俺は片手で顔を隠した。
駄目だ。俺は女を捨て、弱い心も捨てたんだ。
優しさに心を動かされるようじゃ駄目なんだよ。
「ジェーンちゃん」
ぎゅっ
不意に全身を温かさが包み込んだ。
毛布とはまた違うものだった。
マリーが俺を抱擁しているのだ。
「無理しちゃダメだよ?
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