第一部
第五章 〜再上洛〜
六十一 〜魑魅魍魎〜
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を見せたのは、紛れもない、今上陛下。
咄嗟に礼を取ると、霞と愛紗も慌てて倣う。
「ああ、礼は要らぬ」
「しかし陛下。そうは参りませぬ」
「良いと申すのだ」
「……では、恐れながら」
顔を上げ、陛下を正面から見据えた。
「お父様、驚かれたでしょうけど。……まず、宮中で起きている事をお話しします。何進様、宜しいですか?」
月が伺いを立てると、何進は大きく頷く。
「ああ、頼んだ」
「はい。何進様がお怪我をされた訳ですが……。蹇碩様が、刺客を用意していたのです。何進様を害する為に」
「何故だ?」
「蹇碩様は、先の陛下から、密命を帯びていたようなのです」
聞かされた密命。
……それは、あまりにも衝撃的な内容であった。
先代の陛下が、今上陛下に対し、皇帝としての適性に疑問を持たれていた事。
だが、それだけの理由で廃嫡する事も適わず、外戚である何進を、内心では恐れていたらしい事。
西園八校尉も、黄巾党への対抗策であると同時に、外戚である何進に対する戦力として考えられていた事。
本来、麗羽や華琳、睡蓮らは軍人故、何進と敵対する事はあり得ぬ。
だが、皇帝直属の親衛隊としてしまえば、その命で対峙させる事で、何進を抑え込む事も可能……そう判断されたのであろう。
それが整う前に寿命を悟った先代の陛下は、折を見て何進の誅殺を、蹇碩に命じていた。
だが、蹇碩は筆頭とは言え、他の校尉らは素直に自分に従う筈もない事を理解していたようだ。
その最中、任ぜられた全員が洛陽に揃っている。
無論、皆が兵を引き連れている。
形骸化しているとは申せ、八校尉は皇帝の命で動く存在。
そして、その陛下は、何進の甥。
蹇碩が焦りのあまり、思い切った行動に出たとしても、不思議ではない。
「俺は妹と話をしに宮中に来た訳だが。その途中で、蹇碩は襲ってきたのだ」
「しかし、よくぞご無事で」
「蹇碩は多少武を囓ったらしいが、所詮は宦官だぞ? 他の連中も、腰が退けておったわ」
とは申せ、何進も腕力こそあれど、剣の腕はさほどではない。
腕を負傷したのは、当然の結果やも知れぬな。
「だが、襲ってきた以上は仕方がなかった。蹇碩は返り討ちにした」
「何進様から、その知らせと共に、密かに陛下をお連れするように……そう命じられたのです」
と、月。
「……朕は、このような思いまでして、皇帝の座にしがみつきたいとは思わぬのじゃ」
陛下は、俯いたままそう仰せになった。
「伯父上、朕は皇帝に向いてはおらぬ。それは、自覚している」
「……陛下。恐れながらこの何進めも、それは同感ですな」
例え外戚であろうと、これは不敬極まりない。
十常侍らに聞かれれば、如何に何進とは申せ、その場で捕縛されても仕方あるまい。
……だが
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