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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、少女を抱きしめる
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ってたのに! なのにみんなは、サチはっ!守ろうとしてた人たちに、殺されたっていうんですかっ!?」
喉が裂けるのではないかというほどの悲痛な声で、ルシェが僕を問いただす。
最悪だ。彼女の悲しみに追い討ちをかけるような真似を、彼女を慰める側の立場であるはずの僕がしてしまうなんて───

「なんで……、なんでよぉ……!サチぃぃぃ……!」
「………」
あるいは、違和感なんて放っておけばよかったのか。
サチや黒猫団のメンバーたちは、不運にもアラームトラップを引いたせいで壊滅してしまった……そう、思い込んでいたほうが。真相なんて、知らなかったほうが。
僕の腕の中でボロボロになって泣き叫んでいる、彼女にとっても。
そんな彼女を抱きしめながら、迂闊に真相を暴いてしまったことを後悔している、僕にとっても。
少しは───慰めになっていただろうか。

───ちくしょう……。

普段リリアがついているような悪態を、胸の内で呟いた。
畜生、畜生、畜生と。何度も、何度も何度も、繰り返す。

全てが始まったあの日に、赤く染まった空を見上げながら感じた、“嫌な予感”が。
初めてのボス攻略戦に挑む時に感じていた、“嫌な予感”が。
最近ではあまり感じることのなくなっていた、“嫌な予感”が。
今頃になって、こんな形で、的中してしまうなんて。
本当に……最悪だ。


────────────


この時、僕はまだ知らなかった。
例えどんなに凶事が重なって、自分がどん底にいるように思えても。
それを「最悪だ」と思えるうちは───そんなことを考えている余裕があるうちは、まだいいほうなのだということを。

日本人にありがちな無神論者である僕は、世の中で言われている神様なんていうものは、そのほとんどが眉唾に過ぎないものだと思っていた。
だけど、もし本当に、この世に神様なんてものがいるのだとしたら。
「運命」なんていう安っぽい言葉で、これから僕たちに降りかかる出来事を、人の手の届かない領域から高みに見物しているのだとしたら。
そんな神様に、一言だけ言ってやりたいことがある。
例えそれが、以前あれだけ感謝しておいて、今更掌を返すことになるのだとしても。
逆恨みだろうが何だろうが、誰に何と言われようとも、これだけは言っておきたかった。



───あんたなんて、くそくらえだ。



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