つぐない
とあるβテスター、少女を抱きしめる
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かがそうした行為を行うといったことも、今のSAOではまずないだろうと思っていた。
そう───思っていたのに。
サチを含めた《月夜の黒猫団》メンバーたちの死因は、打撃属性が一人、斬属性が一人。そして───貫通属性が、三人。
ケイタとササマルの死因は打撃と斬撃によるものであるため、単に迷宮区のモンスターにやられただけという可能性もある。
だけど、他の三人───ダッカー、テツオ、……そして、サチの死因は。迷宮区のモンスターからでは有り得ない、貫通属性攻撃によるものだった。
それが意味するところは、つまり。スピアやレイピアなどの刺突武器───あるいは、僕と同じ投剣使いか。
そのいずれかを得物とするプレイヤーによる、PK行為を受けたということに他ならない───
「なに……それ」
あまりにも信じがたい───信じたくない結論に、到達してしまった、僕の目の前で。
ルシェの瞳が、光を失ったライトブラウンが、大きく見開かれる。
信じられないものでも見るかのような。
この世の全てに絶望したような。
そんな、表情で。
「プレイヤーキル、って……、人が人を、殺すこと……ですよね」
「ル、シェ……」
なんて───迂闊。
例え無意識によるものだったとしても、よりにもよって彼女の前では、決して口に出すべきではなかった。
サチの死因がPKによるものだったということばかりに気を取られて、目の前にいるルシェへの……サチの親友である彼女への配慮が、あまりにも疎かになっていた───!!
「どういう……こと、なんですか? ねぇ、ユノさん……、教えて、くださいよ。あの子は……、サチは、誰かに殺されたっていうんですか……!?」
「それ、は……」
親友を失ったというだけでも、こんなに悲しんでいるというのに。
その親友が、悪意を持った誰かの手によって、意図して殺害されたのだとしたら。
それを知った時、この子は───ルシェは。
サチを奪ったこの世界に、サチを奪った人間に、彼女を守れなかった自分に絶望して。
絶望して、絶望して、絶望して───最後には、壊れてしまうかもしれない。
サチの命を奪ったのが、同じ人間だったという現実は。この親友想いの少女には、あまりにも───残酷すぎる。
「ねぇ、ユノさんっ!答えてっっ!!」
なのに、僕は。
こうして何も言い出せずにいること、それ自体が、彼女の疑惑を肯定することになっていると、わかっていながら。
わかっていながら───何も、答えられなかった。
あまりにも残酷で、あまりにも重い、そんな現実を……否定することが出来ずにいた。
「月夜の黒猫団は……、サチのギルドは、いつか攻略組に追い付いて、他の人を守れるようになりたいって。それを目指して、みんな頑張ってるんだって……、サチはそう言
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