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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、少女を抱きしめる
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攻撃を行うものはいない。───“だったら”。

《月夜の黒猫団》は、シーフがトラップを作動させたことで全滅したのではなく。
“有り得ないはずの”貫通属性攻撃で、サチのHPを全損に追いやったのは、モンスターなどではなく。

つまり。
つまり、彼らを壊滅に追いやったものの正体は。
その、正体は───ッ!!


「……、プレイヤー、キル……?」
自分の口から思わず零れてしまった呟き───その言葉の意味するところを、僕は。
嫌というほど───知っていた。

プレイヤーキル。通称PK。
フィールドに存在するモンスターを相手にするのではなく、プレイヤーがプレイヤーを攻撃し、戦闘不能に追い込むことを指す用語。
MMORPGの世界ではこのPKを行う者を、《Player Killer》から取って『PKer』、あるいは《Player killing》の文字を取って『PKing』といった呼び方をしている。

一見すると卑劣にも思える行為ではあるものの、フィールドでのPKが可能な仕様のMMOでは立派なプレイスタイルの一つであり、運営会社がPKを推奨しているゲームすらある。
対人戦闘の好きなゲーマーにとって、PKは切っても切り離せない存在だと言っても過言ではなく、あえてPKerとして演じることを楽しむプレイヤーも少なくない。
フィールドに出れば、いつ襲われるかわからない───そんなスリルを味わうための、一種のスパイスとも呼べる仕様だろう。

ただし。PKを至高のものとするプレイヤーがいるのと同じように、PKの存在そのものを快く思わないプレイヤーもいる。
仕様として認められていることはわかってはいても、フィールドで突然襲われた側としては、そういった感情を抱いてしまうのも無理はないだろう。
画面越しにしか他者とコミュニケーションを取れなかった従来のMMORPGならともかく、自分を攻撃してきた相手と直接顔を合わせることになるSAOでは、その傾向は尚さら顕著であると言っていい。

βテストの頃にパーティメンバーをPKし、オレンジ《犯罪者》プレイヤーとなった僕は、投剣を主体に扱うことから《投刃》と呼ばれ、他プレイヤーから追い回される羽目になった。
ここ蘇生者の間で復活が可能だったあの頃ですら、オレンジに対する扱いはそんなものだった。
ましてや現在のSAOでは、他PCを攻撃してHPを全損に追い込むということは、そのアバターを繰るプレイヤーを殺害したことを意味する。
ネームカーソルがグリーンであったにも関わらず、ディアベルやキバオウといった攻略組プレイヤーたちが僕を警戒していた理由は、例え復活可能なβの頃だったとはいえ、一度でも他PCを殺害した前科があるということからだった。
もちろん僕は誰かをPKするつもりなんてなかったし、また、他の誰
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